中古資産の耐用年数はどちらを選ぶ?「新品と同じ年数」で決算書に利益を残し、銀行融資に強い会社をつくる方法
中古資産の 耐用年数は どちらを選ぶ?「新品と同じ年数」で決算書に利益を残し、銀行融資に強い会社をつくる方法
中小企業が営業車や機械装置などの設備を導入する際、コストを抑えられる中古資産を選ぶケースは少なくありません。そして「中古資産は短い期間で一気に減価償却費(経費)にできるので、節税になり資金繰りが楽になる」という話もよく耳にします。
確かに、利益が出すぎている会社にとっては、早めに経費化して税金を抑えることは手元に資金を残す一つの方法です。しかし、実は「あえて新品と同じ法定耐用年数を使い、長期間かけてじっくり償却する」という選択肢も、法的に認められていることはあまり知られていません。
ここで押さえておきたいのは、税金を減らすことと、本当の意味での資金繰り対策とは、必ずしもイコールではないという点です。目先の節税だけを意識して減価償却費を増やしすぎると、決算書上の利益が圧迫され、銀行からの評価が下がり、必要なときに融資を受けにくくなることもあります。
この記事では、資金繰り対策と銀行融資の関係を整理しながら、中古資産の耐用年数をどう選ぶべきか、黒字経営を支える会計実務の考え方をわかりやすく解説します。
1. 資金繰り対策の本質は「節税」より「銀行融資に強い決算書」
まずお伝えしたいのは、資金繰り対策とは手元の税金を減らすことだけではない、ということです。本当の資金繰り対策とは、会社が自由に使えるキャッシュを確保しつつ、必要なときに資金を調達できる体制を整えておくことだと考えられます。
中小企業が事業を拡大したり、予期せぬ変化を乗り越えたりする際、頼りになる選択肢の一つが銀行からの融資です。そして銀行が融資を判断する際に重視するポイントの一つが、決算書の内容、特に本業でどれだけ利益を出しているかという点です。
銀行は決算書を通じて返済能力があるかどうかを確認します。仮に、手元の税金を抑えたいという理由だけで中古資産を短い年数で一気に経費化し、決算書の利益が大きく圧縮されてしまった場合、金融機関からの評価に影響が出る可能性があります。
税金の負担は軽くなったとしても、その分融資を受けにくくなり、結果として資金繰りがかえって厳しくなるケースも考えられます。たとえば、目先の税金を数十万円抑えられたとしても、それによって数千万円規模の融資が受けにくくなるとすれば、会社全体で見た資金繰りは悪化しかねません。
つまり、あえて新品と同じ長い耐用年数を選び、毎年の減価償却費を抑えて決算書にしっかりと利益を残すという選択は、銀行からの信頼を得て、必要なときに資金を調達しやすくするための一つの財務戦略になり得ます。
2. 中古資産でも「新品と同じ耐用年数」は法的に選択できる
税法上、中古資産を取得した際の耐用年数の計算には、主に二つの方法が用意されています。
📋 中古資産を取得した際の耐用年数計算
- ① 簡便法による耐用年数:税法で定められた簡便な計算式を用いて、残りの使用可能期間を見積もり、短い耐用年数を算定する方法(一般的にはこちらが選ばれやすい)。
- ② 法定耐用年数(新品と同じ):その資産が本来持っている法定耐用年数を、そのまま適用する方法。
「中古資産なのに新品と同じ年数で計算して問題にならないか」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、法人税法施行令第57条では、中古資産についても法定耐用年数を適用することが認められています。
どちらの方法を選ぶかは、経営者が自社の財務状況や今後の見通しに合わせて判断できる事項です。ただし、資産の取得時期や事業供用の状況などによって適用できる条件が異なる場合もあるため、実際に適用する際は、自社のケースに当てはめて確認することが大切です。
3. 具体例で見る、耐用年数の違いによる「経費」と「残る利益」の差
耐用年数の選び方によって決算書の数字がどう変わるか、国税庁の減価償却資産の償却率表をもとに、一つの例で確認してみましょう。
🚘 【算出の前提条件】
・資産の種類:普通乗用車(法定耐用年数 6年)
・中古での経過年数:3年
・取得価額:300万円(定率法を採用、期首に取得)
| 比較項目 | パターンA:簡便法(短い年数) | パターンB:新品の法定耐用年数 |
|---|---|---|
| 適用する耐用年数 | 2年(最短) | 6年 |
| 定率法の償却率 | 1.000 | 0.333 |
| 1年目の減価償却費(経費) | 300万円 | 99万9,000円 |
| 2年目以降に繰り越す経費 | ほぼ0円 | 約200万円 |
この二つを比較すると、1年目の経費に約200万円の差が生まれます。今期の業績によってはパターンAを選ぶと赤字になってしまう局面でも、パターンBを選ぶことで決算書上の利益を200万円ほど多く残せる可能性があります。こうした利益の差は、銀行融資の審査結果にも影響しうる要素の一つと考えられます。
4. 実務上の注意点:一度選んだ方法は原則として変更できない
この考え方を実務で活用する際に、必ず押さえておきたい注意点があります。それは、一度新品と同じ耐用年数で償却を始めると、後から「やはり短い期間に変更したい」といった変更は、正当な理由がない限り原則として認められないという点です。
確定申告書を提出する段階でどちらの耐用年数を採用するかを決め、その計算で申告を行うと、その資産についてはそれ以降も同じ耐用年数で償却を続けることになります。これは「継続性の原則」と呼ばれる考え方に基づくものです。
⚠️ 安易な変更は不可能です
「今期さえ乗り切れればよい」という短期的な判断だけで決めるのは避けたいところです。来期以降の売上見通しや固定費、人件費の推移、将来の設備投資計画まで見据えたうえで、慎重に選択することが重要です。
5. まとめ:節税と利益管理は「月次決算」と「経営計画」で先手を打つ
中古資産の耐用年数をどう選ぶかは、単なる経理処理の問題ではありません。会社の利益、現預金、自己資本をどうコントロールし、銀行融資に強い会社をつくっていくかという経営判断そのものといえます。
利益が出すぎているときは短い年数で節税を選び、融資を受けたいときは長い年数で利益を残す。こうした判断を的確に行うためには、決算直前になって慌てて検討するのでは間に合わないケースも少なくありません。
📌 強い財務体制をつくるための2つの土台
自社の数字に関心を持ち、継続的に確認できる経営管理の体制を整えることが、資金繰りを安定させ、黒字経営を実現していくための土台になります。
森本経営会計事務所からのご案内
税理士 森本 雄一
減価償却の方法を検討し、銀行融資に評価される決算書をつくることは、会社に資金を残し、次の成長につなげるために欠かせないプロセスです。ただし、自社にとって中古資産としての耐用年数と新品と同じ耐用年数のどちらが有利かは、将来の業績見通しも含めて総合的に判断する必要があり、経営者様おひとりで決めるのは簡単ではありません。
森本経営会計事務所では、愛知県名古屋市天白区を中心に、多くの中小企業様の月次決算の体制づくりや経営計画の策定をサポートしています。税務申告書の作成にとどまらず、クラウド会計なども活用しながら、経営者様が自社の数字を見て次の一手を判断できる環境づくりをご一緒に進めています。その場しのぎの節税ではなく、銀行融資に評価される健全な黒字経営を目指したい、自社の数字をもっと見える化して資金繰りの不安を減らしたいとお考えの経営者様は、一度当事務所までご相談ください。
📖 参考資料
法人税法第31条、法人税法施行令第48条の2、法人税法施行令第57条(中古資産の耐用年数)、国税庁タックスアンサーNo.5404「中古資産を購入した場合の耐用年数」、国税庁「減価償却資産の償却率表(定率法)」
※本記事の内容は2026年7月時点の税制に基づいています。減価償却方法および耐用年数は、正当な理由がない限り事業年度の途中で任意に変更することはできません。個々の資産の取得時期や適用条件によって取り扱いが異なる場合がありますので、実際の適用に際しては最新の法令・国税庁の公式情報をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。
銀行融資に評価される健全な黒字経営を目指したい、資金繰りの不安を減らしたいとお考えの経営者様は、一度当事務所までご相談ください。
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