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【税制改正】「103万円の壁」が178万円へ!人手不足を解消する人件費・黒字化戦略
【黒字経営専門税理士ブログ】「103万円の壁」が段階的に178万円へ引き上げ決定!税制改正をチャンスに変える中小企業の黒字経営と人件費戦略
多くの経営者や個人事業主の方々を悩ませている人手不足問題。その一因とも言われていた「103万円の壁」が、税制改正により段階的に引き上げられ、2026年(令和8年)分の所得税からは178万円が新たな基準となることが決定しました。
パート社員やアルバイトを雇用する中小企業にとって、この改正は単に「従業員の税金が安くなる」という話だけではありません。企業の労働力確保や人件費コントロール、ひいては会社の資金繰りや黒字経営の計画に直結する重要な転換点となります。
今回は、この税制改正の経緯と実務上の注意点を分かりやすく解説し、経営者が今から取り組むべき月次決算や経営計画を活用した先手を打つ戦略についてお伝えします。
1. 「103万円の壁」引き上げの経緯と経営者への影響
いわゆる「103万円の壁」とは、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低額を合わせた金額のことです。これまでは、パートやアルバイトの年収が103万円を超えると本人に所得税がかかり、さらに扶養している配偶者や親の税金負担も増える仕組みになっていたため、年末が近づくと「就業調整」としてシフトを減らす従業員が続出していました。
この基準は一気に178万円になったわけではなく、2段階で見直されています。
- 2025年(令和7年度税制改正):基礎控除・給与所得控除の見直しにより、課税最低限が160万円まで引き上げ
- 2026年(令和8年度税制改正大綱・2025年12月決定):物価上昇に連動した控除の上乗せなどにより、課税最低限が178万円まで引き上げ
この結果、従業員は税金を気にせず、より長い時間働けるようになり、企業側にとっては年末の深刻な人手不足が緩和され、優秀なパート社員に活躍してもらえる大きなチャンスとなります。
⚠️ 実務上の注意点(源泉徴収のタイミング)
この178万円基準は2026年分の所得税から適用されますが、毎月の給与から差し引く源泉徴収税額表への反映は2027年1月以降に支払う給与等からとされており、2026年中の変化は年末調整でまとめて精算される見込みです。月次で数字を管理する企業にとっては、「年間の課税基準は変わったが、月々の源泉徴収の仕組みは今しばらく従来通り」という点を押さえておく必要があります。
2. 注意すべき「もう一つの壁」と社会保険のリアル
税制上の壁が178万円に広がったとしても、経営者が同時に頭に入れておかなければならないのが「社会保険の壁」です。
現在、従業員数などの一定の要件を満たす企業では「106万円の壁」、それ以外の企業でも「130万円の壁」を超えると、従業員本人が健康保険や厚生年金に加入し、社会保険料を支払う義務が生じます。この2つの壁は、企業規模によって使い分けられている点に注意が必要です。「106万円の壁」は主に従業員数50人超などの企業規模要件を満たす、いわゆる大企業で働く方が対象となる基準です。一方、それ以外の中小企業で働く方は「130万円の壁」(配偶者等の扶養から外れる基準)が適用されます。つまり、多くの中小企業にとって実務上より関わりが深いのは「130万円の壁」ということになります。
なお、「106万円の壁」の賃金要件・企業規模要件については、2025年の年金制度改正法により、今後段階的に縮小・撤廃される方向で進められています(賃金要件は2025年6月から3年以内に撤廃予定、企業規模要件も段階的に縮小・撤廃)。
一方、「130万円の壁」自体は撤廃されるわけではありませんが、2026年4月から判定方法が変更され、実務上は一定の条件付きで緩和されています。従来は「実績や見込みの年間収入」で判定されていましたが、2026年4月以降は労働契約書(労働条件通知書)に基づく契約上の年間収入で判定されることになりました。つまり、契約上の年収が130万円未満であれば、繁忙期の残業などで結果として実際の年収が130万円を超えても、それが「社会通念上妥当な範囲」にとどまる限り、直ちに扶養から外れることはありません。これに加えて、2023年10月から運用されている「事業主の証明」による特例も引き続き利用できます。
税金がかからなくなっても、社会保険料の負担が発生することで手取りが減ることを嫌い、結局130万円未満に労働時間を抑えてしまう従業員が出てくる可能性があります。しかし上記のような条件付きの緩和策を正しく理解・活用すれば、繁忙期の残業対応など、これまで「働き控え」の原因となっていた場面でも柔軟な対応が可能になります。経営者は、トータルでの働き方を従業員に提示し、理解を深めてもらう必要があります。
3. 具体例:時給1,200円のパート社員が働き方を変えた場合
愛知県名古屋市内の店舗で、時給1,200円で働くパート社員Aさんを例に考えてみましょう。
【これまでの「103万円の壁」】
Aさんは年間約858時間(月平均約71時間)しか働けませんでした。
【新たな「178万円の壁」】
理論上は年間約1,483時間(月平均約123時間)まで所得税を気にせず働くことが可能になります。
企業側としては、一人の熟練したパート社員の労働時間を大きく増やすことができるため、新しいスタッフを採用・育成するコストを抑えながら、現場の生産性を高めることができるようになります。ただし、実際の手取りには社会保険料負担も影響するため、Aさんが130万円(または106万円)の社会保険の壁を超えるかどうかも合わせて確認することが重要です。
4. 実務上のポイント:月次決算と経営計画で人件費の増加をコントロールする
パート社員の労働時間が増えることは売上アップにつながる一方で、当然ながら会社の人件費(固定費)や労働保険料の負担も増加します。ここで重要になるのが、場当たり的な経営ではなく、先を見据えた「月次決算」と「経営計画」の連動です。
あらかじめ経営計画で「人件費がこれだけ増えた場合、必要な粗利(売上総利益)はいくらになるか」をシミュレーションし、毎月の月次決算でその進捗をタイムリーに確認します。
特に、上述の通り源泉徴収の仕組みが2027年1月まで従来通りとなる過渡期には、年末調整時にまとめて生じる調整額を見込んでおくなど、キャッシュフロー管理の観点でも注意が必要です。毎月、数字の着地を確認する体制ができていれば、人件費の増加が資金繰りを圧迫する前に、適切な価格転嫁や業務効率化といった黒字経営のための次の一手を打つことができます。
5. 節税と現預金を残す経営判断の重要性
税制改正などの経営環境の変化に対応しながら会社にお金を残すためには、決算直前の突発的な節税ではなく、年間を通じた計画的な経営管理が必要です。
例えば、パート社員の活躍によって増えた利益をもとに、生産性を向上させるためのITツールやクラウド会計ソフトなどの「設備投資」を行う場合、税制上の優遇措置(中小企業投資促進税制など)を活用して賢く節税につなげることができます。
利益をただ税金対策として使い切るのではなく、経営計画に基づき、次の成長への投資として活用することこそが、本当に会社を強くする合法的な節税のあり方です。
6. まとめ
「103万円の壁」から段階的に進んだ178万円への引き上げは、人手不足に悩む中小企業にとって大きな追い風になり得ます。しかし、それを活かせるかどうかは、経営者が自社の数字をどこまで把握し、人件費と利益のバランスをコントロールできているかにかかっています。
制度の適用時期や源泉徴収への反映タイミング、社会保険の基準見直しなど、変化の激しい時代だからこそ、年に一度の決算だけで数字を見るのをやめ、毎月の月次決算で利益と資金繰りを見える化し、黒字経営の基盤を強固にしていきましょう。
森本経営会計事務所からのご案内
税理士 森本 雄一
今回の税制改正への対応をはじめ、会社にお金と利益を残すためには、事前の経営計画と毎月の正しい数字チェックが欠かせません。
名古屋市天白区に拠点を置く森本経営会計事務所では、単なる税務申告書の作成にとどまらず、中小企業の皆様が黒字経営を継続するための月次決算の導入や、人件費・資金繰りを含めた経営計画の策定を全力でサポートしています。「税制改正を機に、自社の数字をしっかり見直したい」「人件費の増加に負けない強い経営体質を作りたい」とお考えの経営者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
📖 根拠・参考資料
法令:所得税法第86条(基礎控除)、第28条(給与所得)など
税制改正資料:「令和7年度税制改正大綱」「令和8年度税制改正大綱」(2025年12月19日与党公表)、財務省・国税庁・厚生労働省等から発表される改正案内・リーフレット等
社会保険関連資料:令和7年(2025年)年金制度改正法(106万円の壁の賃金要件・企業規模要件の段階的縮小・撤廃)、厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(130万円の壁の判定方法変更、2026年4月適用)、「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱い
※実務上の補足:本記事は2026年7月時点で入手可能な情報に基づき作成しています。「103万円の壁」から160万円、178万円への引き上げの適用時期、源泉徴収への反映時期、経過措置、また社会保険(106万円・130万円の壁)の見直しの最終的な実務運用については、今後の政省令改正や国税庁・厚生労働省等の公式情報によって内容が変更・確定する可能性があります。最新情報のご確認、または実務適用にあたっては当事務所までお問い合わせください。
大学生のアルバイト収入はいくらまで?扶養控除と特定親族特別控除をわかりやすく解説|森本経営会計事務所
「子どもがアルバイトを頑張っているけど、稼ぎすぎると親の税金が増えてしまうの?」
令和7年度の税制改正で、19歳以上23歳未満のお子さんに関する仕組みが大きく変わりました。
この記事では、大学生の方にも読みやすいよう、ポイントをわかりやすくまとめています。
1. 19歳以上23歳未満の親族って、どんな人が対象?
税法上の「19歳以上23歳未満の親族」とは、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の方をさします。大学生・短大生・専門学校生のお子さんが多く該当します。
この年齢層は「特定扶養親族」と呼ばれ、一般の扶養親族(16歳以上)よりも控除額が大きく設定されています。令和7年度の改正では、これに加えて「特定親族特別控除」という新しい制度が創設されました。
年齢の判定は「12月31日時点」で行います。その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満であれば対象です。なお、アルバイト収入だけでなく、すべての所得(給与・雑所得など)を合算した「合計所得金額」で判定します。
2. 親が受けられる控除は、収入額によって3段階に変わる
改正後の所得税(令和7年分以後)では、大学生のお子さんの収入に応じて、親が受けられる控除が3段階に分かれます。
→ 特定扶養親族:扶養控除 63万円
→ 特定親族特別控除:63万円〜3万円(段階的に減少)
→ 控除なし:0円
改正前との大きな違い
改正前は給与収入103万円(合計所得48万円)を超えると扶養控除が0円になっていました。改正後は、収入が増えても188万円以下であれば段階的に控除が受けられるため、「一気にゼロ」という状況が緩和されています。
3. 特定親族特別控除の金額一覧(国税庁より)
給与収入が123万円を超えた場合でも、188万円以下であれば以下の控除を受けられます。収入が増えるほど控除額は減っていきます(段階的逓減方式)。
| お子さんの合計所得金額 | 給与収入のみの場合の目安 | 親が受けられる控除額 |
|---|---|---|
| 58万円以下 | 〜123万円 | 63万円 (扶養控除として) |
| 58万円超 85万円以下 | 123万円超〜150万円 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下 | 150万円超〜155万円 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 155万円超〜160万円 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 160万円超〜165万円 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 165万円超〜170万円 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 170万円超〜175万円 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 175万円超〜180万円 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 180万円超〜185万円 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 185万円超〜188万円 | 3万円 |
| 123万円超 | 188万円超 | 0円(控除なし) |
※給与収入の目安は概算です。給与以外の所得がある場合は異なります。
出典:国税庁 No.1177 特定親族特別控除
複数のアルバイト先がある場合は、すべての給与収入を合計して判定します。「1社だけなら少ない」と思っていても、合算すると基準を超えることがあります。短期・単発バイトも含めて確認しましょう。
4. 税金とは別!社会保険の扶養は150万円未満が新基準
税金(所得税・住民税)の扶養とは別に、健康保険の扶養認定にも注意が必要です。
130万円未満 (年間収入の基準)
150万円未満 (令和7年10月1日以降/配偶者を除く)
令和7年10月1日より、19歳以上23歳未満の方については、社会保険の扶養認定の収入基準が150万円未満に引き上げられました。ただし、これは税金の扶養控除・特定親族特別控除とは別の話です。
税金と社会保険は別々に確認が必要
税金の扶養(所得税法・国税庁が管轄)と社会保険の扶養(健康保険組合・年金事務所が管轄)では、判定の基準額・手続き先・考え方がそれぞれ異なります。どちらも別々に確認することが大切です。
また、アルバイトの勤務時間や契約内容によっては、お子さん自身が職場の社会保険に加入する場合があります。その場合は親の扶養から外れますので、アルバイト先にも確認しておきましょう。
5. 年末調整・確定申告の前に確認したいこと
親御さんの年末調整や確定申告で控除を正しく受けるためには、お子さんの年間収入の確認が欠かせません。
- 源源徴収票の「支払金額」欄が、その年の給与収入にあたります。
- 年の途中であれば、給与明細や勤務先からの収入見込みで確認しましょう。
- 複数のアルバイトをしている場合は、全勤務先の収入を合算して判定します。
- 年末に向けてシフトを増やす場合は、年間合計が想定より増えることがあります。
令和8年分の年末調整からは「給与所得者の特定親族特別控除申告書」が新設されています。会社に提出する書類が増えますので、記入漏れのないよう早めに確認しておきましょう。
6. まとめ:収入額ごとの整理
| お子さんの給与収入 | 所得税の取扱い | 社会保険の扶養(目安) |
|---|---|---|
| 123万円以下 | 特定扶養親族として扶養控除(63万円) | 扶養内 |
| 123万円超〜150万円未満 | 特定親族特別控除(63万円〜一部) | 扶養内 (19〜23歳未満の場合) |
| 150万円〜188万円以下 | 特定親族特別控除(一部) | 扶養から外れる場合あり |
| 188万円超 | 控除なし | 扶養から外れる場合あり |
※社会保険の欄は一般的な目安です。健康保険組合により基準が異なる場合があります。
森本経営会計事務所では、扶養控除・特定親族特別控除・年末調整・確定申告に関するご相談をお受けしています。お子さんのアルバイト収入が増えてきた場合は、年末調整・確定申告の前に、年間収入の見込みを早めに確認しておきましょう。ご不明な点はお気軽にご相談ください。
このブログは2026年6月に作成されたものです。令和7年分以後の所得税に適用される内容をもとにしています。
税制は改正されることがあります。最新の情報は国税庁ウェブサイト(www.nta.go.jp)または当事務所までご確認ください。
配偶者の扶養はいくらまで?「税金の壁」と「社会保険の壁」の違いを税理士がわかりやすく解説
配偶者の扶養はいくらまで?税金の壁と社会保険の壁をわかりやすく解説
税理士 森本 雄一
配偶者がパートやアルバイトで働いているご家庭では、「いくらまでなら扶養に入れるのか」「収入が増えると税金や社会保険はどう変わるのか」というご相談をよくいただきます。
「扶養」と一言でいっても、税金の扶養と社会保険の扶養は別々の制度です。金額の基準が異なるため、まずはこの2つを切り分けて理解することが大切です。
1. 「収入」と「所得」の違いをおさえておましょう
扶養の話をする前に、確認しておきたいことがあります。それは「収入」と「所得」の違いです。
💰 給与収入(額面)
会社から受け取る総支給額、つまり源泉徴収票の「支払金額」にあたります。
📉 給与所得
給与収入から「給与所得控除(会社員の経費のようなもの)」を差し引いた後の金額です。
扶養の判定では主に「収入」の金額を使いますが、制度によって見方が異なる場合もあります。収入と所得を混同しないよう注意が必要です。
2. 税金の扶養は配偶者控除と配偶者特別控除で考えます
所得税の計算では、配偶者の年収に応じて「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けられる場合があります。控除が大きいほど、世帯の税負担は軽くなります。
給与収入だけの場合、所得税の控除基準は次のように整理できます。
| 配偶者の給与収入 | 適用される控除 |
|---|---|
| 136万円以下 | 配偶者控除の対象(満額の控除) |
| 136万円超 〜 207万円以下 | 配偶者特別控除(段階的に控除額が減少) |
| 207万円超 | 控除対象外(どちらも受けられません) |
ここで大切なのは、136万円を少し超えたからといって、すぐに控除がゼロになるわけではないということです。207万円まで控除が段階的に残る仕組みになっているため、「少しだけ超えたら大損」とは限りません。
※なお、控除を受ける側(配偶者を扶養している方)の年収が1,000万円を超える場合は、配偶者控除・配偶者特別控除ともに適用されません。
3. 社会保険の扶養は原則130万円未満です
税金とは別に、健康保険や年金にも扶養の仕組みがあります。社会保険の扶養では、原則として年間収入130万円未満(月収換算で108,333円以下)が一つの基準です。(※60歳以上または一定の障害のある方の場合は年間収入180万円未満)
⚠️ 税金と社会保険の「扶養のズレ」に注意
たとえば年収132万円の場合、税金上は配偶者控除の対象になりますが、社会保険の扶養からは外れる可能性が高くなります。また、社会保険は1月〜12月の実績ではなく、「これから先1年間の収入見込み」で判断される点も大きな違いです。
さらに、年収が130万円未満であっても、配偶者ご本人の勤務時間や勤務先の規模などによっては、職場の社会保険に自ら加入しなければならないケースがあります(いわゆる106万円の壁)。その場合も扶養から外れることになります。
4. 手取り額全体で考えることが大切です
「年収の壁を超えると損をする」とよく言われますが、税金だけを見て判断するのは十分ではありません。社会保険の扶養から外れると、健康保険料や年金保険料の自己負担が新たに発生するため、手取り額への影響が大きくなる場合があります。
手取りが一時的に減る一方で、将来受け取れる「厚生年金」が増える、病気休業時の傷病手当金が手厚くなるなどの大きなメリットもあります。
「税金がいくら増えるか」だけでなく、社会保険料の負担、将来の年金、希望する働き方なども含めて、世帯全体で総合的に判断することが重要です。
5. まとめ
- 配偶者の扶養を考えるときは、「税金」と「社会保険」を分けて整理する。
- 税金の目安:給与収入だけの場合、配偶者控除は136万円以下、配偶者特別控除は136万円超〜207万円以下。
- 社会保険の目安:原則130万円未満だが、勤務先の規模等によっては106万円で外れることもある。
- 年末調整や確定申告の時期になって慌てないよう、年の途中から収入の見込みを確認しておきましょう。
※本記事は2026年6月時点の法令、制度に基づき作成しています。税制や社会保険制度は随時改正されることがあるため、実際の判断にあたっては最新情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを提供するものではありません。
青色事業専従者給与の特例とは?勤務実態と金額の妥当性に注意!
行政書士
青色事業専従者給与の特例とは?
税務調査で否認されない「勤務実態」と「妥当性」の境界線
事業の規模が拡大するにつれ、配偶者や子どもなどの親族に事業を手伝ってもらうケースは多くなります。個人事業主が家族に支払う給与は原則として必要経費になりませんが、「青色事業専従者給与の特例」を活用することで、一定の要件を満たせば実際に支払った給与の全額を必要経費に算入することが可能です。
しかし、この特例は家族間の資金移動を伴うため、税務調査で非常に厳しくチェックされる論点でもあります。後から「経費として認められない」と否認されないために、経営者が必ず押さえておくべき要件と防衛策を解説します。
青色事業専従者給与として認められる4つの基本要件
特例の適用を受けるためには、以下の4つの要件をすべてクリアしている必要があります。
- 青色事業専従者への支払いであること
青色申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族であり、その年の3月15日(または開業・専従者が新たに加わった日から2ヶ月以内)時点で15歳以上であること。かつ、年間を通じて原則6ヶ月を超えてその事業に専ら従事している必要があります。 - 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
納税地の所轄税務署長に対し、期限内に届出書を提出していなければなりません。 - 届出書の記載通りに支払われていること
届出書に記載した「支給方法」および「上限金額の範囲内」で実際に支払われていることが絶対条件です。届出額を超えて支払った金額は必要経費になりません。 - 給与の額が「労務の対価」として相当であること
家族だからといって、仕事内容に対して支払う金額が過大でないことが求められます。
税務調査の現場でプロが見る「2つの死活問題」
形式的な届出書を出していても、実態が伴っていなければ税務調査で無情にも否認されます。税務署が特に目を光らせるのは以下の2点です。
①「勤務実態の有無」を客観的に証明できるか
「本当にそれだけの時間、その仕事をしていたのか」という実態がチェックされます。単に「手伝ってもらっている」という口頭の主張だけでは通用しません。
💡 求められる防衛策: 実際の仕事内容を説明できる「業務日報」や、勤務状況の記録となる「出勤簿・タイムカード」などを必ず作成し、客観的な証拠として残しておくことが求められます。
②「給与の額の妥当性」に客観的な根拠はあるか
実際に働いた期間や時間、業務の難易度に対して、給与が高すぎると判断された場合、その過大とみなされた部分は必要経費から除外されます。
📊 判断の基準: 「他に見習い従業員を雇った場合の給与相場」や「類似同業者の専従者給与の支給水準」などと比較して、世間一般の常識から逸脱していないかが判断の基準となります。
⚠️ 【オーナー経営者の盲点】年の途中の変更・届出の罠
実務の上で最もトラブルになりやすく、当事務所へのご相談も多いのが、「年の途中で専従者給与の額を増やしたい(または減らしたい)」「年の途中から家族を新しく専従者にしたい」というケースです。
これらは、税務署への届出書の提出期限や変更手続きのタイミングを1日でも間違えると、その年の変更分や給与全額が一切経費として認められなくなるという極めて高いリスクを孕んでいます。
税務調査に強い健全な財務基盤を作るために
青色事業専従者給与は、正しく活用すれば大きな節税効果を生みますが、一歩間違えれば税務調査での格好の標的となります。「うちの専従者給与の金額設定は本当に安全か?」「年の途中の手続きに不安がある」というオーナー経営者様は、後から高額な追徴課税を課される前に、ぜひ一度当事務所へご相談ください。税務署に指摘されない、強固な実務体制の構築をサポートいたします。
【令和8年度改正】会社契約の通勤用駐車場代も非課税に?月5,000円加算ルールを税理士が解説


自動車通勤をしている従業員の方や、会社の経理・総務担当者の方にとって気になる「通勤用駐車場代」の税務ルール。
令和8年度(2026年度)の税制改正により、自動車・バイク・自転車などで通勤する従業員について、一定の駐車場等料金を通勤手当の非課税限度額に加算できる新制度が創設されました。
特に実務面で注目されているのが、「会社契約の駐車場でも対象になるのか」「どこまでが非課税になるのか」「給与課税との関係はどう整理すべきか」という点です。
今回は、国税庁が公表した最新Q&A(令和8年4月)をもとに、税理士の視点からわかりやすく解説します。
令和8年度税制改正で何が変わった?
今回の改正では、自動車等通勤者の通勤手当に関して主に2つの見直しが行われました。
① 遠距離通勤者の非課税限度額が引き上げ
これまで片道55km以上の区分は月額38,700円が上限でしたが、令和8年度改正では片道65km以上について新たな距離区分が設けられました。これにより、片道95km以上の場合は月額66,400円まで非課税となります。
※なお、片道45km以上55km未満の区分については、引き続き月額32,300円が非課税限度額となります。
② 駐車場等料金を月5,000円まで加算可能に
今回の実務上もっとも影響が大きいのがこちらです。従来の「通勤距離に応じた非課税限度額」に加えて、新たに「駐車場等料金(上限5,000円)」を加算できる制度が新設されました。
この制度は、令和8年4月1日以後に支払われる通勤手当から適用されます。
会社契約の駐車場でも対象になる?
ここが今回の非常に大きなポイントです。国税庁Q&A(Q4-2)では、「会社が従業員に代わって駐車場を契約し、料金を直接負担した場合」についても、非課税加算の対象になることが明記されました。
つまり、以下のいずれのケースであっても、一定の条件を満たせば月5,000円まで非課税にできます。
- 従業員本人が契約して、会社がその費用を補助するケース
- 会社が直接駐車場を契約して、支払うケース
これまで実務上グレーになりやすかった部分が、今回の改正でかなり明確に整理されたといえるでしょう。
対象になるのは「通勤先周辺」の駐車場
注意したいのは、すべての駐車場代が対象になるわけではない点です。対象となるのは以下の場所に限られます。
- 勤務先周辺の駐車場
- 駅、停留所、空港、フェリー乗り場周辺の駐車場等(パーク&ライド等)
一方で、「自宅近くの月極駐車場」や「自宅保管用のガレージ」などは対象外となりますのでご注意ください。
また、「駐車場等」には、自動車用駐車場だけでなくバイク駐輪場や自転車駐輪場も含まれます。複数の駐車場等を利用している場合は、その合計額について上限5,000円まで非課税加算が可能です。
「会社負担なら給与課税されないのでは?」という疑問
実務では、「会社名義で契約して会社が払うなら、単なる会社の経費(地代家賃など)であり、従業員の給与には関係ないのでは?」という疑問を持たれることがあります。
確かに会社側では経費計上されますが、税務上は「誰のための支出か」によって、以下のように取り扱いが異なります。
🚗 営業車用の駐車場の場合
これは会社業務のための支出(会社のための経費)であるため、従業員への課税問題は一切生じません。
👤 従業員の通勤用駐車場の場合
従業員個人の通勤のために利用する駐車場は、会社が直接支払っていても「従業員に対する通勤手当相当の経済的利益(給与)」として整理されます。そのため、本来は給与課税の検討が必要になります。
今回の改正により、会社名義の契約であっても「月5,000円までは非課税(給与課税しなくてよい)」として処理できることが明確になったため、実務上の負担やリスクはかなり軽減されたといえます。
具体例|上限を超えた場合はどう計算する?
国税庁の最新Q&Aで紹介されている事例をもとに、上限を超えた場合の計算方法を確認してみましょう。
【事例設定】
- 通勤距離: 片道50km(非課税限度額は32,300円)
- 駐車場の契約: 会社が勤務先付近の駐車場を契約
- 実際の駐車場代: 月額6,000円
💡 税務上の計算手順
| ① 通勤手当等の総額 | 32,300円 + 6,000円 = 38,300円 |
|---|---|
| ② 新・非課税限度額 | 32,300円 + 5,000円(上限)= 37,300円 |
| ③ 課税対象額(給与) | 38,300円 − 37,300円 = 1,000円 |
このように、上限をオーバーした場合は「超過した1,000円のみ」が毎月の給与課税(所得税等の対象)となります。
※なお、実際の駐車場代が8,000円や10,000円であっても、非課税として加算できるのは一律5,000円が上限です。また、そもそも自動車等通勤者の非課税制度は「片道2km未満」の距離には適用されないため、この加算措置も片道2km未満の従業員は対象外となります。
まとめ|実務上のグレーゾーンを整理した改正
今回の税制改正は、「通勤用駐車場代の税務処理を実務(現場の実態)に合わせてスッキリと整理した」という意味合いが非常に強い改正です。
特に「会社契約の駐車場」と「通勤手当・経済的利益課税」の関係について、国税庁が明確なガイドラインを示した点は、会社側にとって非常に大きな安心材料と言えます。
自動車通勤者が多い企業におかれましては、この機会に以下のような社内運用の確認・見直しを行っておくことをおすすめします。
- 通勤手当規程や駐車場補助ルールの見直し
- 社宅や会社の近くに借りている駐車場の契約名義・実態チェック
- 給与計算ソフトの非課税マスタや年末調整運用の確認
令和8年4月以降の給与計算実務に直結する変更内容ですので、早めに対応を進めていきましょう。
【経営者必読】子ども・子育て支援金制度の概要と、中小企業が生き抜くための人材戦略
いよいよ2026年度から、少子化対策の新たな財源確保を目的とした「子ども・子育て支援金制度」がスタートします。児童手当の拡充や育児支援サービスの強化など、日本の未来を見据えた重要な施策である一方、経営者の皆様にとって最も気になるのは「企業負担(人件費)への影響」ではないでしょうか。
今回の法改正は、単なる社会保障のニュースではありません。これからの「人件費経営」を大きく左右する転換点となります。本記事では、新制度の仕組みと中小企業が直面する課題、 tender して今取るべき対策について解説します。
1. 制度の概要と企業への直接的な影響
今回の支援金は、新たに独立した税金を徴収するのではなく、「公的医療保険(健康保険等)の保険料に上乗せする形」で徴収されます。
ここが中小企業経営において見過ごせないポイントです。会社員の場合、医療保険料は「労使折半」が原則。つまり、従業員本人の負担が増えるだけでなく、会社側にも同額の社会保険料負担が新たに発生することを意味します。
国は「導入当初の一人あたりの平均負担額は数百円程度」と説明していますが、問題はそれだけにとどまりません。近年の経営環境を振り返ってみてください。
- 相次ぐ最低賃金の引き上げ
- 深刻な人手不足に伴う採用コストの高騰
- 物価高による原材料費・光熱費の負担増
- 社会保険の適用拡大(短時間労働者の加入義務化)
このように、すでに中小企業の固定費は全方位から押し上げられています。そこへさらに今回の支援金が加わることで、「人を雇うコストそのものがじわじわと上がり続ける」という、ボディブローのような経営圧迫要因になるのです。
2. 従業員の「手取りへの不満」と社内コミュニケーションの重要性
影響は会社の財務面だけではありません。従業員側の「手取り額への関心」はこれまで以上に高まっています。
「せっかく昇給したのに、社会保険料や税金が増えて手取りが思ったより増えない」という不満は、多くの現場で聞かれる声です。2026年度以降、給与明細の控除額がさらに増えれば、不信感やモチベーションの低下に繋がりかねません。最悪の場合、「なぜ給料から引かれているのか」と会社側に矛先が向くケースも予想されます。
だからこそ、経営者や総務担当者には「制度変更を正しく説明する力」が求められます。
【社内で共有すべき重要ポイント】
- 国の制度改正による公的な徴収であること
- 会社が勝手に天引きしているわけではないこと
- 従業員だけでなく、会社も同額を負担していること
これらを社内報や面談などで丁寧に共有し、誤解を防ぐための誠実なコミュニケーションが重要になります。
3. これからの時代を生き抜く「人件費経営」2つの視点
コスト増が避けられない時代だからこそ、中小企業は「どんぶり勘定」の経営から脱却しなければなりません。今後の人材戦略として、以下の2つの視点が不可欠です。
(1)「総合的な魅力(ノン・マネタリー・ベネフィット)」での勝負
これからは、単純な「給与額面の引き上げ」だけで人材を惹きつけるのは難しくなります。人件費の総額をコントロールしつつ優秀な人材を確保するためには、「働きやすさ」や「柔軟な勤務制度」といった福利厚生の充実がカギとなります。
- リモートワークやフレックスタイム制の導入
- 有給休暇の取得率向上
- 社内研修や資格取得支援などの「成長できる環境」の整備
金銭以外での自社の魅力を高めることが、結果として定着率向上と採用コスト抑制に繋がります。
(2)将来を見据えた資金計画と人件費管理
給与を上げれば、連動して会社負担の社会保険料も膨らみます。「これくらいなら大丈夫だろう」という予測の甘さは、将来の資金繰りを急速に悪化させます。
5年後、10年後の人員計画と、それに伴う法定福利費のシミュレーションをあらかじめ行い、経営計画に組み込んでおくことが経営防衛の第一歩です。
まとめ
「子ども・子育て支援金制度」の開始は、中小企業にとって人件費管理のあり方を見直す大きな契機です。
人件費や社会保険料の増加をただ恐れるのではなく、「いかにして労働生産性を高め、付加価値を上げていくか」という前向きな投資の視点を持つことが、これからの時代を生き抜く経営者に求められます。
自社の状況に合わせたシミュレーションや、中長期的な資金計画の策定など、制度開始に向けた準備を今から進めていきましょう。
「源泉徴収票」が2027年から一本化!年末調整の手続きはどう変わる?
「会社の年末調整、少しラクになるかも?」2027年から変わる“源泉徴収票”の新ルールをやさしく解説
1. はじめに
2027年から、会社の年末調整や給与関係の手続きが少し変わります。
ニュースなどでは「源泉徴収票のみなし提出の特例」という難しい名前で紹介されていますが、簡単にいうと、
という制度です。
「それって会社の話でしょ?」 と思う方も多いかもしれません。
たしかに直接の対象は会社の事務手続きですが、実は働く人にも無関係ではありません。
今回は、“一般の人にとって何が変わるのか”という視点で、わかりやすく整理してみます。
2. そもそも源泉徴収票って何?
会社員の方なら、毎年1月ごろに「源泉徴収票」を受け取っていると思います。
これは、以下のような内容が書かれている書類です。
- ・1年間でいくら給料をもらったか
- ・どれくらい税金が引かれたか
- ・社会保険料はいくらだったか
住宅ローン控除、保育園の手続き、奨学金、扶養確認など、意外と使う場面が多い書類でもあります。
3. 実は会社は“同じ内容”を何回も提出している
あまり知られていませんが、会社は従業員に源泉徴収票を渡すだけではありません。同じような内容を、下記の複数の役所へ送っている状態です。
- ・市区町村
- ・税務署
これが2027年から整理されます。市区町村へ提出すれば、税務署へ提出したものと「みなす」ことになり、二重提出が不要になります。
4. 一般の人にはどんなメリットがある?
「会社がラクになるだけでは?」 と思うかもしれませんが、働く側にも間接的なメリットがあります。
4-1.会社の事務ミスが減る可能性
提出先が複数あると、「数字の入力違い」「提出漏れ」「データ不一致」などが起こりやすくなります。提出先が整理されれば、こうしたミスが減ることも期待できます。年末調整は短期間に大量処理をするため、シンプルになること自体が大切です。
4-2.会社のバックオフィス負担が減る
中小企業では、経理担当者が少人数で対応しているケースも珍しくありません。事務作業が減れば、「給与計算のチェック」「問い合わせ対応」「従業員向け説明」など、本来必要な業務に時間を使いやすくなります。結果的に、ストレスの軽減につながる可能性もあります。
4-3.将来的なデジタル化につながる
今回の改正は、行政手続きの簡素化・デジタル化の流れの一つでもあります。将来的には、「税金関係の書類がもっと簡単になる」「マイナポータル連携が進む」「会社員の手続き負担が減る」といった方向へ進む可能性があります。
5. ただし、源泉徴収票自体はなくならない
※ここは誤解しやすいポイントです。
税務署への提出が不要になるだけで、従業員本人へ交付する源泉徴収票は、これまでどおり必要です。つまり、会社員が受け取る源泉徴収票は今後も残ります。住宅ローン控除や各種手続きで使う場面も変わりません。
6. まとめ
今回の改正は、一見すると「会社の事務手続きの話」に見えます。しかし、以下のような意味では働く人にも少しずつ影響してくる制度変更です。
- ・事務ミスの減少
- ・バックオフィス負担の軽減
- ・行政手続きの簡素化
- ・将来的なデジタル化
こうした“地味だけど重要な改正”が積み重なることで、将来的には年末調整や税金の手続きそのものが、もっとシンプルになっていくかもしれませんね。
事前確定届出給与の厳格な税務上の取り扱い


事前確定届出給与の厳格な税務上の取り扱い
1.1. ― 届け出た給与の「減額」「取りやめ」「支給漏れ」が招く重大リスク ―
役員給与の設計において、事前確定届出給与は役員賞与等を損金算入するための重要な制度です。しかし、この制度は“いつ・いくら支給するか”をあらかじめ届け出た内容どおりに実行することを前提としており、その要件は極めて厳格に定められています。
本記事では、事前確定届出給与の運用における「減額」や「支給遅延」「支給漏れ」などの変更・ミスが招く深刻な税務リスクについて解説します。
1.2. 制度の目的と厳格性の背景
事前確定届出給与とは、役員給与の恣意的な操作を防ぐために設けられた制度で、損金算入の適正化を図ることを目的としています。利益調整を防ぐため、支給内容に関する要件は非常に厳格です。
- ● 事前に支給時期と金額を税務署へ届け出ていること
- ● 届け出た支給時期に正しく支給すること
- ● 届け出た金額をそのまま支給すること
1.3. わずかな変更・ミスでも「損金不算入」の可能性
事前確定届出給与の運用において特に注意すべきは、たとえ軽微な変更や事務的ミスでも税務的には欠落とみなされる点です。
「業績が悪化したから減らす」「今年は支給しない」といった判断は、すべて制度の要件違反となります。
資金繰りの都合や事務処理の遅れで1日でも支給日が遅れた場合、制度の適用が否認される可能性があります。
単純なミスでも「届け出どおりでない」と判断されます。その結果、その期間の役員給与全体が損金不算入となり、重い追徴課税が生じるリスクがあります。
1.4. 例外的に変更が認められるケース
原則として変更は認められませんが、以下のような客観的かつ不可避な事由がある場合には例外的に認められることがあります。
- 役員の退任・降格・昇格など、地位の恒久的な変更があった場合
- 緊急かつ重大な経営危機(経営が著しく悪化し維持が困難)
※ ただし、所定の期日までに再届出が必要であり、認められるハードルは非常に高いのが実情です。
1.5. まとめ:安全な制度利用のために
安全に運用するためには、次の2点を徹底することが重要です。
役員報酬制度は企業の税務に大きな影響を及ぼします。
制度の利用や変更に際しては、必ず税理士などの専門家へご相談ください。
合同会社の事前確定届出給与に関する東京国税局の新たな文書回答
📝 合同会社の事前確定届出給与に関する東京国税局の新たな文書回答
名古屋や愛知県内でも増加している合同会社では、業務執行社員に支給する役員賞与の取り扱いが法人税上の論点となることが多くあります。特に「事前確定届出給与」として損金に算入できるかどうかは、税務上の重要な判断ポイントです。
株式会社であれば株主総会の決議日を基準に届出期限を算定できますが、合同会社には株主総会が存在せず、「職務の執行の開始日」が曖昧なため、実務上の取扱いが不明確でした。
このたび、東京国税局が納税者からの照会に対して正式な文書回答を公表し、合同会社の事前確定届出給与に関する届出期限の解釈が明確化されました。これは全国の税理士や会計事務所にとって実務判断のよりどころとなる内容です。
【1】国税局の明確な回答内容
照会の内容は、合同会社が定時社員総会を開催し、その場で業務執行社員の職務執行期間に対応する役員賞与を決定した場合に、「定時社員総会の開催日」を職務執行開始日とみなしてよいかというものでした。
これに対して東京国税局は、「その事実関係を前提とする限り差し支えない」と明確に回答しています。
つまり、定時社員総会の開催日から1か月以内に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出すれば、法人税法上の損金算入が認められるという立場が示されたのです。
【2】実務への影響と注意すべき点
名古屋市内でも、合同会社の設立や経営支援を行う税理士事務所では、このテーマに関する相談が増えています。特にスタートアップや小規模企業では、業務執行社員=経営者自身であることが多く、役員賞与をどのように扱うかは節税やキャッシュフロー管理に直結します。
今回の国税局回答により、株式会社と同様に手続きを踏めば、合同会社でも役員賞与を損金算入できる道がはっきりと示されました。
ただし注意すべきは、届出期限を過ぎると損金算入が認められないという点です。
定時社員総会の議事録や総社員の同意書で報酬決定日を明確にし、開催日から1か月以内に税務署へ届出書を提出することが不可欠です。届出が遅れれば、せっかくの節税機会を失うリスクがあります。
【3】まとめ:地域に密着したサポートを
愛知県・名古屋の経営者の皆さまにおかれては、今回の東京国税局の回答を踏まえ、事前確定届出給与の制度を積極的に活用することをお勧めします。
地域に密着した税理士・会計事務所と連携し、法人税の適正申告と経営安定化の両立を図ることが、これからの時代に求められる賢い経営判断といえるでしょう。
名古屋市天白区の税理士が解説:事前確定届出賞与の基本と注意点
💰 名古屋市天白区の税理士が解説:事前確定届出賞与の基本と注意点
役員に支給する賞与(ボーナス)は、原則として会社の経費(損金)にはできません。
しかし、「事前確定届出賞与」としてあらかじめ支給金額・支給時期・支給対象者を税務署に届け出ておけば、損金算入が認められます。
この届出は、事業年度開始の日から4か月以内または株主総会の日から1か月以内のいずれか早い日までに提出する必要があります。
届出後の変更は原則できない
この制度のポイントは、「事前に確定している」ことです。一度届出を提出した後は、支給金額を変更したり、支給日をずらしたり、支給自体を取りやめたりすることは原則できません。
⚠️ 厳重注意
もし変更を行った場合、その賞与は全額が損金不算入(経費として認められない)扱いとなります。届出通りに支給できないと税務上の扱いが厳しくなるため注意が必要です。
やむを得ない場合のみ変更届が認められる
ただし、会社の意思ではどうにもならない「やむを得ない事由」がある場合には、例外的に変更が認められます。その際は「事前確定届出給与に係る変更届出書」を提出します。
変更が認められる代表的なケース
- 火災・地震・感染症など、災害や事故で支給が困難になった場合
- 主要取引先の倒産や資金繰りの悪化など、経営に重大な影響が生じた場合
- 役員の死亡・退任・病気など、支給対象者がいなくなった場合
※客観的に見て「会社の責任ではない」と判断される事情が必要です。
変更届の手続き
変更届の提出先は所轄の税務署です。提出期限は、「やむを得ない理由が生じた日から1か月以内」とされています。
提出の際は、変更理由を説明する書類のほか、災害証明書・医師の診断書・倒産通知などの**証明書類**を添付する必要があります。
認められないケースに注意
一方で、次のような理由は「やむを得ない事由」とは認められません。
- 思ったより業績が悪化した
- 他の役員とのバランスを取るため変更したい
- 資金繰りが厳しくなったので支給を延期したい
これらは経営判断の範囲内とされ、変更届を出しても原則として損金算入は認められません。
まとめ
事前確定届出賞与は、届出を出せば経費にできる便利な制度ですが、その反面、届出内容の変更は原則不可能です。
災害や重大な経営危機など「やむを得ない事由」がある場合を除き、変更や取消しを行うと税務上の不利益を受けます。届出の時点で金額・支給日を慎重に決定することが重要です。
名古屋市天白区の森本会計事務所では、事前確定届出賞与の作成から提出、変更届の対応まで丁寧にサポートしています。
制度の活用やリスク回避の方法についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。












