小規模企業共済の死亡給付金、兄弟で受け取るときの分け方は?代表者請求と等分ルール、非課税枠まで税理士がわかりやすく解説


小規模企業共済の死亡給付金は誰が受け取る?遺産分割との違いと受給権・手続き・相続税の注意点を解説
「掛け金は全額所得控除になるから」と小規模企業共済に加入している経営者の方は多くいらっしゃいます。老後の退職金準備と日頃の節税を両立できる、中小企業の経営者や個人事業主にとって非常に優れた制度です。
しかし、経営者ご本人に万が一のことがあった場合、残されたご家族が受け取る「死亡給付金(共済金)」の取り扱いには注意が必要です。この死亡給付金は遺産分割協議の対象にはならず、法律で定められた順位の人が受け取ります。実務では「誰にどれだけの権利があるか(分け方)」と「実際にどう請求し、口座に受け取るか(受け取り方)」は別の問題であり、この違いを理解しておかないと手続きで混乱しやすいポイントです。
この記事では、受給権者の順位による違い、同順位の兄弟が複数いる場合の受給権の分け方とその例外、そして受給権が決まった後の請求・受け取りの実務、税金上の非課税枠について解説します。あわせて、こうした制度を日頃の経営管理にどう位置づけるかについてもお伝えします。
1. 小規模企業共済の死亡給付金は遺産分割協議の対象外となる理由
小規模企業共済の死亡給付金は、残されたご家族が行う「遺産分割協議」の対象にはなりません。
この死亡給付金は、小規模企業共済法によって受け取るべき人の範囲と順位(受給権者)が定められているためです。亡くなった経営者の財産(遺産)として相続されるのではなく、法律に基づいて指定されたご遺族が「自分自身の権利」として直接受け取る、固有の財産と位置づけられています。
⚠️ 遺言書や遺産分割協議よりも法律の規定が優先されます
遺言書に「特定の人に譲る」と記載されていたり、遺産分割協議で「特定の相続人がすべて相続する」と話し合ったりしても、法律で定められた受給権を変更することはできません。この点は誤解が生じやすいため、あらかじめ理解しておくことが大切です。
2. 配偶者が受け取る場合
小規模企業共済法では、死亡給付金を最も優先して受け取る第1順位の受給権者は「配偶者」とされています。
亡くなった経営者に配偶者がいる場合、他の親族が何人いても、原則として配偶者一人がすべての死亡給付金を受け取る権利を持ちます。受給権者が配偶者一人であれば、按分の手続きや親族間での分配について心配する必要は基本的にありません。手続きも配偶者単独で進められるため、比較的スムーズに進行しやすい形です。
3. 兄弟姉妹が受け取る場合──「誰にどれだけの権利があるか」の原則と例外
小規模企業共済法では、第1順位の配偶者に続き、第2順位は子、第3順位は父母、第4順位は孫、第5順位が兄弟姉妹という順位が定められています。先順位の受給権者がおらず、兄弟姉妹が受給権者となり、その人数が2人、あるいは3人いる場合は、全員が「同順位の受給権者」となります。
この章で扱うのは、「誰がどれだけの受給権(権利)を持つか」という分け方の問題です。次の4章で扱う「実際にどう請求し、口座に受け取るか」とは別の話である点を、まず押さえておいてください。
【原則】受給権者の人数で等分(平等に分ける)
同順位の受給権者が複数いる場合、遺産分割協議のように話し合いで割合を決めるのではなく、法律の規定に基づき等分するのが原則です。
・同順位の兄弟が2人の場合:それぞれ2分の1ずつ
・同順位の兄弟が3人の場合:それぞれ3分の1ずつ
【例外】全員の合意による一人への集中
同順位の受給権者全員の合意があれば、等分ではなく、特定の一人がすべての受給権を持つ形にすることも可能とされています。この場合、他の受給権者が自身の持分を放棄する、あるいは特定の一人に譲る旨の書類を整えるなど、通常の等分とは異なる手続きが必要になります。具体的な取り扱いや必要書類は個別の状況により異なりますので、事前に中小機構へ確認することをおすすめします。
なお、この例外はあくまで「権利そのものをどう分けるか」の話であり、次に説明する代表者請求とは考え方が異なります。
4. 受給権が決まった後の「受け取り方」の実務──代表者請求と個別請求
3章で決まった各自の持分(原則は等分、例外で偏った配分もありうる)を前提に、実際に中小企業基盤整備機構(中小機構)へどう請求し、お金をどう受け取るかという実務上の選択肢が、代表者請求と個別請求です。ここでのポイントは、請求方法を変えても、3章で決まった各自の受給権(持分)そのものは変わらないという点です。
4-1. 代表者を定めて一括で受け取る場合(代表者請求)
同順位の受給権者の中から1人の代表者を決め、その代表者が全員分の共済金を一括して請求し、代表者の口座で受け取る方法です。あくまで「請求・受領の窓口を一本化する」手続きであり、受給権(誰がいくら受け取るべきかという権利)自体は3章で定まった持分のままです。
メリットとして、中小機構への提出書類を代表者1人分にまとめられるため、手続きの手間を軽減しやすくなります。一方で、代表者が受け取ったお金は「全員のもの」であることに変わりはありません。受け取った後、法律で定められた持分に応じて他の兄弟姉妹へ速やかに分配する義務があります。分配が滞ったり、認識のずれが生じたりすると、親族間でのトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
4-2. 法定の割合(等分)でそれぞれが個別に受け取る場合(個別請求)
代表者を立てず、兄弟姉妹それぞれが自分の持分を、自分自身の口座へ直接振り込んでもらうよう請求する方法です。こちらも、3章で定まった持分そのものを変えるものではなく、受け取り方の違いにすぎません。
お金が直接本人の口座に振り込まれるため、受け取った後の分配という手間や、分配をめぐる不信感を避けやすくなります。一方で、それぞれが個別に請求書を記入し、戸籍謄本や印鑑証明書などの必要書類を揃えて中小機構へ提出する必要があるため、全体としての手続きの手間は増える傾向にあります。
4-3. 3章の例外(一人への集約)を選んだ場合の請求方法
3章で述べた例外、すなわち受給権者全員の合意により一人がすべての受給権を持つことになった場合は、その時点で受給権者が実質的に一人だけになっているため、代表者請求のような「後で分配する」手続きは不要です。その一人が、通常の個別請求と同じ流れで単独で請求すればよいことになります。
つまり、代表者請求は「複数の権利者がいる状態のまま、受け取りの窓口だけをまとめる方法」であるのに対し、3章の例外は「そもそも権利者を一人に集約してしまう方法」であり、両者は次元の異なる話です。どちらを選ぶか、あるいは組み合わせて検討すべきかは、親族間の関係性や状況によって異なりますので、迷う場合は税理士など専門家に相談しながら検討することをおすすめします。
5. 死亡退職金等の非課税枠(500万円×法定相続人の数)について
請求方法にかかわらず、税務上、小規模企業共済の死亡給付金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし、残された遺族の生活安定を考慮し、「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかからない非課税枠が設けられています。
代表者請求により代表者が一括して受け取った場合であっても、税金は実際に受給権を持つ各兄弟姉妹が、それぞれの持分に応じて負担する形になります。代表者1人の財産としてまとめて課税されるわけではありません。
💡 計算の具体例
経営者が亡くなり、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人だったとします。小規模企業共済から1,500万円の死亡給付金が配偶者に支払われた場合、非課税枠は次のようになります。
500万円 × 3人 = 1,500万円
このケースでは、受け取った死亡給付金1,500万円と非課税枠が一致するため、この共済金について相続税はかからない計算になります。仮に共済金が2,000万円だった場合は、非課税枠を超えた500万円分が、他の預貯金や不動産などの遺産と合算されて相続税の計算対象となります。
なお、3章の例外により一人が受給権を集約した場合、非課税枠の適用はその実際に受給権を持つ人を基準に判断されます。その人が法定相続人であれば非課税枠を活用できますが、法定相続人に該当しない場合は非課税枠が適用されない可能性があります。受給権者である兄弟姉妹が法定相続人に該当するかどうかや、相続放棄があった場合の扱いも含め、非課税枠の適用関係は個別の状況によって異なりますので、具体的な取り扱いについては事前に税理士へ確認することをおすすめします。
6. 共済金だけで終わらせない、日頃の経営管理と資金繰り
小規模企業共済は、万が一のときのご家族への備えや、日頃の節税対策として優れた制度です。ただし、本当に強い会社を作るためには、特定の制度に頼るだけでは十分とはいえません。「万が一のときにご家族へお金を残すこと」と「日頃から会社に現預金を残し、黒字経営を続けること」は、地続きの課題だからです。
決算直前になって節税のために未払費用をかき集めたり、必要性の薄い設備投資を検討したりするケースは少なくありません。しかし、急な節税はキャッシュの流出を伴うことが多く、結果として資金繰りを悪化させる可能性があります。税金を減らすことだけを目的にして手元の現金が不足してしまっては、本来の目的から外れてしまいます。
大切なのは、日頃から月次決算を行い、最新の業績をタイムリーに把握することです。売上、粗利益、固定費、人件費などの数字を継続的に管理し、資金繰りを見据えた経営計画を立てておくことで、共済金の活用も含めた利益の残し方や投資のタイミングが見えやすくなります。月次決算や経営計画を経営に取り入れることで、手元に現預金が残る黒字経営の体制づくりにつながります。こうした体制は銀行融資の評価にもプラスに働きやすく、万が一の際にも会社を次の世代へ引き継ぎやすくなります。
まとめ
小規模企業共済の死亡給付金は遺産分割協議の対象外であり、配偶者がいれば優先的に受け取り、兄弟姉妹が同順位の場合は原則として等分となります。この「誰にどれだけの権利があるか」という分け方の話に対して、全員の合意があれば例外として一人に権利を集約することも可能です。
一方、「実際にどう請求し、口座に受け取るか」は別の問題であり、代表者請求(窓口の一本化、後で分配義務あり)と個別請求(各自が直接受け取る)のいずれかを選ぶことになります。この2つの軸を混同しないことが、実務をスムーズに進める鍵になります。
こうした制度や手続きを正しく理解しておくことは重要ですが、経営者にとってさらに大切なのは、こうした仕組みを黒字経営という大きな枠組みの中にどう位置づけるかです。目先の節税にとらわれるのではなく、月次決算や経営計画を通じて「会社にいくら残し、どう成長させるか」を日頃からセットで考えることが、最も確実なリスクヘッジになります。
森本経営会計事務所からのご案内
税理士 森本 雄一
黒字経営を目指すためには、売上だけでなく、利益、固定費、資金繰り、税金の支払い予定まで含めて数字を確認することが大切です。名古屋市天白区の森本経営会計事務所では、愛知県内の中小企業を中心に、税務申告だけでなく、毎月の数字をもとにした利益改善・資金繰りのご相談にも対応しています。万が一への備えとあわせて、自社の数字をどこから見直せばよいかお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
📖 根拠・参考資料
法令:小規模企業共済法第10条(共済金の支給を受けるべき者の範囲及び順位、同順位者が複数ある場合の等分規定)/ 相続税法第3条第1項第2号(みなし相続財産・課税価格の計算)/ 相続税法第12条第1項第6号(死亡退職金等の非課税限度額)
国税庁資料:国税庁タックスアンサー No.4117「死亡退職金を受け取ったとき」
※実務上の補足:受給権(持分)の決め方、代表者請求・個別請求といった受け取り方の実務、および受給権者全員の合意により一人が受給権を集約する場合の手続き・必要書類については、中小企業基盤整備機構(中小機構)の最新の「共済金請求手続きのご案内」等を必ずご確認ください。相続人以外の者が共済金を取得した場合の非課税枠の不適用など、個別の税務判断については最新の法令に基づき税理士等の専門家にご相談ください。制度は変更される可能性があるため、最新情報は国税庁・財務省等の公式情報でご確認ください。
森本経営会計事務所では、名古屋市天白区周辺の地域に根ざした会計事務所として、経営者様ごとのご事情を丁寧に確認し、税務と会計の両面から状況を整理するお手伝いをしております。
将来の引退プランやご家族への資産承継について、少しでも不安や分からない部分がございましたら、どうぞ落ち着いて、まずは一度お気軽にご相談ください。











