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【税制改正】「103万円の壁」が178万円へ!人手不足を解消する人件費・黒字化戦略
【黒字経営専門税理士ブログ】「103万円の壁」が段階的に178万円へ引き上げ決定!税制改正をチャンスに変える中小企業の黒字経営と人件費戦略
多くの経営者や個人事業主の方々を悩ませている人手不足問題。その一因とも言われていた「103万円の壁」が、税制改正により段階的に引き上げられ、2026年(令和8年)分の所得税からは178万円が新たな基準となることが決定しました。
パート社員やアルバイトを雇用する中小企業にとって、この改正は単に「従業員の税金が安くなる」という話だけではありません。企業の労働力確保や人件費コントロール、ひいては会社の資金繰りや黒字経営の計画に直結する重要な転換点となります。
今回は、この税制改正の経緯と実務上の注意点を分かりやすく解説し、経営者が今から取り組むべき月次決算や経営計画を活用した先手を打つ戦略についてお伝えします。
1. 「103万円の壁」引き上げの経緯と経営者への影響
いわゆる「103万円の壁」とは、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低額を合わせた金額のことです。これまでは、パートやアルバイトの年収が103万円を超えると本人に所得税がかかり、さらに扶養している配偶者や親の税金負担も増える仕組みになっていたため、年末が近づくと「就業調整」としてシフトを減らす従業員が続出していました。
この基準は一気に178万円になったわけではなく、2段階で見直されています。
- 2025年(令和7年度税制改正):基礎控除・給与所得控除の見直しにより、課税最低限が160万円まで引き上げ
- 2026年(令和8年度税制改正大綱・2025年12月決定):物価上昇に連動した控除の上乗せなどにより、課税最低限が178万円まで引き上げ
この結果、従業員は税金を気にせず、より長い時間働けるようになり、企業側にとっては年末の深刻な人手不足が緩和され、優秀なパート社員に活躍してもらえる大きなチャンスとなります。
⚠️ 実務上の注意点(源泉徴収のタイミング)
この178万円基準は2026年分の所得税から適用されますが、毎月の給与から差し引く源泉徴収税額表への反映は2027年1月以降に支払う給与等からとされており、2026年中の変化は年末調整でまとめて精算される見込みです。月次で数字を管理する企業にとっては、「年間の課税基準は変わったが、月々の源泉徴収の仕組みは今しばらく従来通り」という点を押さえておく必要があります。
2. 注意すべき「もう一つの壁」と社会保険のリアル
税制上の壁が178万円に広がったとしても、経営者が同時に頭に入れておかなければならないのが「社会保険の壁」です。
現在、従業員数などの一定の要件を満たす企業では「106万円の壁」、それ以外の企業でも「130万円の壁」を超えると、従業員本人が健康保険や厚生年金に加入し、社会保険料を支払う義務が生じます。この2つの壁は、企業規模によって使い分けられている点に注意が必要です。「106万円の壁」は主に従業員数50人超などの企業規模要件を満たす、いわゆる大企業で働く方が対象となる基準です。一方、それ以外の中小企業で働く方は「130万円の壁」(配偶者等の扶養から外れる基準)が適用されます。つまり、多くの中小企業にとって実務上より関わりが深いのは「130万円の壁」ということになります。
なお、「106万円の壁」の賃金要件・企業規模要件については、2025年の年金制度改正法により、今後段階的に縮小・撤廃される方向で進められています(賃金要件は2025年6月から3年以内に撤廃予定、企業規模要件も段階的に縮小・撤廃)。
一方、「130万円の壁」自体は撤廃されるわけではありませんが、2026年4月から判定方法が変更され、実務上は一定の条件付きで緩和されています。従来は「実績や見込みの年間収入」で判定されていましたが、2026年4月以降は労働契約書(労働条件通知書)に基づく契約上の年間収入で判定されることになりました。つまり、契約上の年収が130万円未満であれば、繁忙期の残業などで結果として実際の年収が130万円を超えても、それが「社会通念上妥当な範囲」にとどまる限り、直ちに扶養から外れることはありません。これに加えて、2023年10月から運用されている「事業主の証明」による特例も引き続き利用できます。
税金がかからなくなっても、社会保険料の負担が発生することで手取りが減ることを嫌い、結局130万円未満に労働時間を抑えてしまう従業員が出てくる可能性があります。しかし上記のような条件付きの緩和策を正しく理解・活用すれば、繁忙期の残業対応など、これまで「働き控え」の原因となっていた場面でも柔軟な対応が可能になります。経営者は、トータルでの働き方を従業員に提示し、理解を深めてもらう必要があります。
3. 具体例:時給1,200円のパート社員が働き方を変えた場合
愛知県名古屋市内の店舗で、時給1,200円で働くパート社員Aさんを例に考えてみましょう。
【これまでの「103万円の壁」】
Aさんは年間約858時間(月平均約71時間)しか働けませんでした。
【新たな「178万円の壁」】
理論上は年間約1,483時間(月平均約123時間)まで所得税を気にせず働くことが可能になります。
企業側としては、一人の熟練したパート社員の労働時間を大きく増やすことができるため、新しいスタッフを採用・育成するコストを抑えながら、現場の生産性を高めることができるようになります。ただし、実際の手取りには社会保険料負担も影響するため、Aさんが130万円(または106万円)の社会保険の壁を超えるかどうかも合わせて確認することが重要です。
4. 実務上のポイント:月次決算と経営計画で人件費の増加をコントロールする
パート社員の労働時間が増えることは売上アップにつながる一方で、当然ながら会社の人件費(固定費)や労働保険料の負担も増加します。ここで重要になるのが、場当たり的な経営ではなく、先を見据えた「月次決算」と「経営計画」の連動です。
あらかじめ経営計画で「人件費がこれだけ増えた場合、必要な粗利(売上総利益)はいくらになるか」をシミュレーションし、毎月の月次決算でその進捗をタイムリーに確認します。
特に、上述の通り源泉徴収の仕組みが2027年1月まで従来通りとなる過渡期には、年末調整時にまとめて生じる調整額を見込んでおくなど、キャッシュフロー管理の観点でも注意が必要です。毎月、数字の着地を確認する体制ができていれば、人件費の増加が資金繰りを圧迫する前に、適切な価格転嫁や業務効率化といった黒字経営のための次の一手を打つことができます。
5. 節税と現預金を残す経営判断の重要性
税制改正などの経営環境の変化に対応しながら会社にお金を残すためには、決算直前の突発的な節税ではなく、年間を通じた計画的な経営管理が必要です。
例えば、パート社員の活躍によって増えた利益をもとに、生産性を向上させるためのITツールやクラウド会計ソフトなどの「設備投資」を行う場合、税制上の優遇措置(中小企業投資促進税制など)を活用して賢く節税につなげることができます。
利益をただ税金対策として使い切るのではなく、経営計画に基づき、次の成長への投資として活用することこそが、本当に会社を強くする合法的な節税のあり方です。
6. まとめ
「103万円の壁」から段階的に進んだ178万円への引き上げは、人手不足に悩む中小企業にとって大きな追い風になり得ます。しかし、それを活かせるかどうかは、経営者が自社の数字をどこまで把握し、人件費と利益のバランスをコントロールできているかにかかっています。
制度の適用時期や源泉徴収への反映タイミング、社会保険の基準見直しなど、変化の激しい時代だからこそ、年に一度の決算だけで数字を見るのをやめ、毎月の月次決算で利益と資金繰りを見える化し、黒字経営の基盤を強固にしていきましょう。
森本経営会計事務所からのご案内
税理士 森本 雄一
今回の税制改正への対応をはじめ、会社にお金と利益を残すためには、事前の経営計画と毎月の正しい数字チェックが欠かせません。
名古屋市天白区に拠点を置く森本経営会計事務所では、単なる税務申告書の作成にとどまらず、中小企業の皆様が黒字経営を継続するための月次決算の導入や、人件費・資金繰りを含めた経営計画の策定を全力でサポートしています。「税制改正を機に、自社の数字をしっかり見直したい」「人件費の増加に負けない強い経営体質を作りたい」とお考えの経営者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
📖 根拠・参考資料
法令:所得税法第86条(基礎控除)、第28条(給与所得)など
税制改正資料:「令和7年度税制改正大綱」「令和8年度税制改正大綱」(2025年12月19日与党公表)、財務省・国税庁・厚生労働省等から発表される改正案内・リーフレット等
社会保険関連資料:令和7年(2025年)年金制度改正法(106万円の壁の賃金要件・企業規模要件の段階的縮小・撤廃)、厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(130万円の壁の判定方法変更、2026年4月適用)、「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱い
※実務上の補足:本記事は2026年7月時点で入手可能な情報に基づき作成しています。「103万円の壁」から160万円、178万円への引き上げの適用時期、源泉徴収への反映時期、経過措置、また社会保険(106万円・130万円の壁)の見直しの最終的な実務運用については、今後の政省令改正や国税庁・厚生労働省等の公式情報によって内容が変更・確定する可能性があります。最新情報のご確認、または実務適用にあたっては当事務所までお問い合わせください。
小規模企業共済の死亡給付金、兄弟で受け取るときの分け方は?代表者請求と等分ルール、非課税枠まで税理士がわかりやすく解説


小規模企業共済の死亡給付金は誰が受け取る?遺産分割との違いと受給権・手続き・相続税の注意点を解説
「掛け金は全額所得控除になるから」と小規模企業共済に加入している経営者の方は多くいらっしゃいます。老後の退職金準備と日頃の節税を両立できる、中小企業の経営者や個人事業主にとって非常に優れた制度です。
しかし、経営者ご本人に万が一のことがあった場合、残されたご家族が受け取る「死亡給付金(共済金)」の取り扱いには注意が必要です。この死亡給付金は遺産分割協議の対象にはならず、法律で定められた順位の人が受け取ります。実務では「誰にどれだけの権利があるか(分け方)」と「実際にどう請求し、口座に受け取るか(受け取り方)」は別の問題であり、この違いを理解しておかないと手続きで混乱しやすいポイントです。
この記事では、受給権者の順位による違い、同順位の兄弟が複数いる場合の受給権の分け方とその例外、そして受給権が決まった後の請求・受け取りの実務、税金上の非課税枠について解説します。あわせて、こうした制度を日頃の経営管理にどう位置づけるかについてもお伝えします。
1. 小規模企業共済の死亡給付金は遺産分割協議の対象外となる理由
小規模企業共済の死亡給付金は、残されたご家族が行う「遺産分割協議」の対象にはなりません。
この死亡給付金は、小規模企業共済法によって受け取るべき人の範囲と順位(受給権者)が定められているためです。亡くなった経営者の財産(遺産)として相続されるのではなく、法律に基づいて指定されたご遺族が「自分自身の権利」として直接受け取る、固有の財産と位置づけられています。
⚠️ 遺言書や遺産分割協議よりも法律の規定が優先されます
遺言書に「特定の人に譲る」と記載されていたり、遺産分割協議で「特定の相続人がすべて相続する」と話し合ったりしても、法律で定められた受給権を変更することはできません。この点は誤解が生じやすいため、あらかじめ理解しておくことが大切です。
2. 配偶者が受け取る場合
小規模企業共済法では、死亡給付金を最も優先して受け取る第1順位の受給権者は「配偶者」とされています。
亡くなった経営者に配偶者がいる場合、他の親族が何人いても、原則として配偶者一人がすべての死亡給付金を受け取る権利を持ちます。受給権者が配偶者一人であれば、按分の手続きや親族間での分配について心配する必要は基本的にありません。手続きも配偶者単独で進められるため、比較的スムーズに進行しやすい形です。
3. 兄弟姉妹が受け取る場合──「誰にどれだけの権利があるか」の原則と例外
小規模企業共済法では、第1順位の配偶者に続き、第2順位は子、第3順位は父母、第4順位は孫、第5順位が兄弟姉妹という順位が定められています。先順位の受給権者がおらず、兄弟姉妹が受給権者となり、その人数が2人、あるいは3人いる場合は、全員が「同順位の受給権者」となります。
この章で扱うのは、「誰がどれだけの受給権(権利)を持つか」という分け方の問題です。次の4章で扱う「実際にどう請求し、口座に受け取るか」とは別の話である点を、まず押さえておいてください。
【原則】受給権者の人数で等分(平等に分ける)
同順位の受給権者が複数いる場合、遺産分割協議のように話し合いで割合を決めるのではなく、法律の規定に基づき等分するのが原則です。
・同順位の兄弟が2人の場合:それぞれ2分の1ずつ
・同順位の兄弟が3人の場合:それぞれ3分の1ずつ
【例外】全員の合意による一人への集中
同順位の受給権者全員の合意があれば、等分ではなく、特定の一人がすべての受給権を持つ形にすることも可能とされています。この場合、他の受給権者が自身の持分を放棄する、あるいは特定の一人に譲る旨の書類を整えるなど、通常の等分とは異なる手続きが必要になります。具体的な取り扱いや必要書類は個別の状況により異なりますので、事前に中小機構へ確認することをおすすめします。
なお、この例外はあくまで「権利そのものをどう分けるか」の話であり、次に説明する代表者請求とは考え方が異なります。
4. 受給権が決まった後の「受け取り方」の実務──代表者請求と個別請求
3章で決まった各自の持分(原則は等分、例外で偏った配分もありうる)を前提に、実際に中小企業基盤整備機構(中小機構)へどう請求し、お金をどう受け取るかという実務上の選択肢が、代表者請求と個別請求です。ここでのポイントは、請求方法を変えても、3章で決まった各自の受給権(持分)そのものは変わらないという点です。
4-1. 代表者を定めて一括で受け取る場合(代表者請求)
同順位の受給権者の中から1人の代表者を決め、その代表者が全員分の共済金を一括して請求し、代表者の口座で受け取る方法です。あくまで「請求・受領の窓口を一本化する」手続きであり、受給権(誰がいくら受け取るべきかという権利)自体は3章で定まった持分のままです。
メリットとして、中小機構への提出書類を代表者1人分にまとめられるため、手続きの手間を軽減しやすくなります。一方で、代表者が受け取ったお金は「全員のもの」であることに変わりはありません。受け取った後、法律で定められた持分に応じて他の兄弟姉妹へ速やかに分配する義務があります。分配が滞ったり、認識のずれが生じたりすると、親族間でのトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
4-2. 法定の割合(等分)でそれぞれが個別に受け取る場合(個別請求)
代表者を立てず、兄弟姉妹それぞれが自分の持分を、自分自身の口座へ直接振り込んでもらうよう請求する方法です。こちらも、3章で定まった持分そのものを変えるものではなく、受け取り方の違いにすぎません。
お金が直接本人の口座に振り込まれるため、受け取った後の分配という手間や、分配をめぐる不信感を避けやすくなります。一方で、それぞれが個別に請求書を記入し、戸籍謄本や印鑑証明書などの必要書類を揃えて中小機構へ提出する必要があるため、全体としての手続きの手間は増える傾向にあります。
4-3. 3章の例外(一人への集約)を選んだ場合の請求方法
3章で述べた例外、すなわち受給権者全員の合意により一人がすべての受給権を持つことになった場合は、その時点で受給権者が実質的に一人だけになっているため、代表者請求のような「後で分配する」手続きは不要です。その一人が、通常の個別請求と同じ流れで単独で請求すればよいことになります。
つまり、代表者請求は「複数の権利者がいる状態のまま、受け取りの窓口だけをまとめる方法」であるのに対し、3章の例外は「そもそも権利者を一人に集約してしまう方法」であり、両者は次元の異なる話です。どちらを選ぶか、あるいは組み合わせて検討すべきかは、親族間の関係性や状況によって異なりますので、迷う場合は税理士など専門家に相談しながら検討することをおすすめします。
5. 死亡退職金等の非課税枠(500万円×法定相続人の数)について
請求方法にかかわらず、税務上、小規模企業共済の死亡給付金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし、残された遺族の生活安定を考慮し、「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかからない非課税枠が設けられています。
代表者請求により代表者が一括して受け取った場合であっても、税金は実際に受給権を持つ各兄弟姉妹が、それぞれの持分に応じて負担する形になります。代表者1人の財産としてまとめて課税されるわけではありません。
💡 計算の具体例
経営者が亡くなり、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人だったとします。小規模企業共済から1,500万円の死亡給付金が配偶者に支払われた場合、非課税枠は次のようになります。
500万円 × 3人 = 1,500万円
このケースでは、受け取った死亡給付金1,500万円と非課税枠が一致するため、この共済金について相続税はかからない計算になります。仮に共済金が2,000万円だった場合は、非課税枠を超えた500万円分が、他の預貯金や不動産などの遺産と合算されて相続税の計算対象となります。
なお、3章の例外により一人が受給権を集約した場合、非課税枠の適用はその実際に受給権を持つ人を基準に判断されます。その人が法定相続人であれば非課税枠を活用できますが、法定相続人に該当しない場合は非課税枠が適用されない可能性があります。受給権者である兄弟姉妹が法定相続人に該当するかどうかや、相続放棄があった場合の扱いも含め、非課税枠の適用関係は個別の状況によって異なりますので、具体的な取り扱いについては事前に税理士へ確認することをおすすめします。
6. 共済金だけで終わらせない、日頃の経営管理と資金繰り
小規模企業共済は、万が一のときのご家族への備えや、日頃の節税対策として優れた制度です。ただし、本当に強い会社を作るためには、特定の制度に頼るだけでは十分とはいえません。「万が一のときにご家族へお金を残すこと」と「日頃から会社に現預金を残し、黒字経営を続けること」は、地続きの課題だからです。
決算直前になって節税のために未払費用をかき集めたり、必要性の薄い設備投資を検討したりするケースは少なくありません。しかし、急な節税はキャッシュの流出を伴うことが多く、結果として資金繰りを悪化させる可能性があります。税金を減らすことだけを目的にして手元の現金が不足してしまっては、本来の目的から外れてしまいます。
大切なのは、日頃から月次決算を行い、最新の業績をタイムリーに把握することです。売上、粗利益、固定費、人件費などの数字を継続的に管理し、資金繰りを見据えた経営計画を立てておくことで、共済金の活用も含めた利益の残し方や投資のタイミングが見えやすくなります。月次決算や経営計画を経営に取り入れることで、手元に現預金が残る黒字経営の体制づくりにつながります。こうした体制は銀行融資の評価にもプラスに働きやすく、万が一の際にも会社を次の世代へ引き継ぎやすくなります。
まとめ
小規模企業共済の死亡給付金は遺産分割協議の対象外であり、配偶者がいれば優先的に受け取り、兄弟姉妹が同順位の場合は原則として等分となります。この「誰にどれだけの権利があるか」という分け方の話に対して、全員の合意があれば例外として一人に権利を集約することも可能です。
一方、「実際にどう請求し、口座に受け取るか」は別の問題であり、代表者請求(窓口の一本化、後で分配義務あり)と個別請求(各自が直接受け取る)のいずれかを選ぶことになります。この2つの軸を混同しないことが、実務をスムーズに進める鍵になります。
こうした制度や手続きを正しく理解しておくことは重要ですが、経営者にとってさらに大切なのは、こうした仕組みを黒字経営という大きな枠組みの中にどう位置づけるかです。目先の節税にとらわれるのではなく、月次決算や経営計画を通じて「会社にいくら残し、どう成長させるか」を日頃からセットで考えることが、最も確実なリスクヘッジになります。
森本経営会計事務所からのご案内
税理士 森本 雄一
黒字経営を目指すためには、売上だけでなく、利益、固定費、資金繰り、税金の支払い予定まで含めて数字を確認することが大切です。名古屋市天白区の森本経営会計事務所では、愛知県内の中小企業を中心に、税務申告だけでなく、毎月の数字をもとにした利益改善・資金繰りのご相談にも対応しています。万が一への備えとあわせて、自社の数字をどこから見直せばよいかお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
📖 根拠・参考資料
法令:小規模企業共済法第10条(共済金の支給を受けるべき者の範囲及び順位、同順位者が複数ある場合の等分規定)/ 相続税法第3条第1項第2号(みなし相続財産・課税価格の計算)/ 相続税法第12条第1項第6号(死亡退職金等の非課税限度額)
国税庁資料:国税庁タックスアンサー No.4117「死亡退職金を受け取ったとき」
※実務上の補足:受給権(持分)の決め方、代表者請求・個別請求といった受け取り方の実務、および受給権者全員の合意により一人が受給権を集約する場合の手続き・必要書類については、中小企業基盤整備機構(中小機構)の最新の「共済金請求手続きのご案内」等を必ずご確認ください。相続人以外の者が共済金を取得した場合の非課税枠の不適用など、個別の税務判断については最新の法令に基づき税理士等の専門家にご相談ください。制度は変更される可能性があるため、最新情報は国税庁・財務省等の公式情報でご確認ください。
森本経営会計事務所では、名古屋市天白区周辺の地域に根ざした会計事務所として、経営者様ごとのご事情を丁寧に確認し、税務と会計の両面から状況を整理するお手伝いをしております。
将来の引退プランやご家族への資産承継について、少しでも不安や分からない部分がございましたら、どうぞ落ち着いて、まずは一度お気軽にご相談ください。
これからの経営は「何でもできます」より「何で選ばれるか」が大事になる
これからの経営は「何でもできます」より「何で選ばれるか」が大事になる
中小企業の経営者様とお話ししていると、「売上を上げるために、お客様から頼まれたことは何でも引き受けている」というお声をよく耳にします。たしかに、創業期やとにかく仕事が欲しい時期においては、間口を広げることは一つの生存戦略です。
しかし、ある程度事業が軌道に乗ってきた段階でも「何でも屋」を続けてしまうと、次第に利益率が低下し、社員が疲弊していくケースが少なくありません。変化が激しく、人手不足が深刻化するこれからの時代において、中小企業が生き残るためのキーワードは一つです。
それは、「何でもできます」という看板を下ろし、「自社が何で選ばれるか(=独自の強み)」を明確にすることです。この記事では、脱・何でも屋を図り、利益体質の会社をつくるための考え方を解説します。
1. 「何でもやります」が引き起こす3つの経営リスク
「何でもできます」というアピールは、一見するとお客様にとって便利で魅力的に思えますが、経営視点で見ると以下のような深刻なリスクをはらんでいます。
- ① 価格競争に巻き込まれる:専門性がないため、他社と比較された際に「安さ」でしか勝負できなくなります。
- ② 現場(社員)が疲弊する:毎回異なるパターンの業務が発生するため、仕組み化やマニュアル化ができず、属人的な業務が増えて労働環境が悪化します。
- ③ 会社の印象が残らない:「何でもできる」は「何が得意かわからない」と同義です。結果として、お客様からの紹介やリピートが生まれにくくなります。
売上は立っているのに手元にお金が残らない、社員の定着率が悪いといった悩みの根源は、実はこの「何でも引き受けてしまう経営スタンス」にあることが多いのです。
2. 「何で選ばれるか」を明確にする(=ポジショニング)
一方で、利益をしっかりと出し、社員が活き活きと働いている会社は、「自社がどの領域で勝負するのか」を明確に絞り込んでいます。これが経営におけるポジショニング(立ち位置の明確化)です。
たとえば、飲食店で考えてみてください。「和洋中なんでもあります」というファミリーレストランと、「自家製麺と地鶏スープにこだわった塩ラーメン専門店」があった場合、本当に美味しい塩ラーメンを食べたい人は、多少高くても後者を選びます。
ターゲットと専門性を絞り込むことで、「それを求めているお客様」に対して圧倒的な価値を提供でき、結果として「価格決定権を自社で持てる(=値上げができる)」という最大のメリットが生まれます。
3. 財務データから自社の「強み」を見つけ出す
「絞り込みが大事なのはわかるが、自社の強みがわからない」という経営者様もいらっしゃるかもしれません。その際、感覚や思い込みではなく、決算書や月次の数字(財務データ)から強みを見つけ出すアプローチが非常に有効です。
📌 数字から強みを分析する3つの視点
売上構成比と粗利益率を掛け合わせて分析すると、「実はこのニッチなサービスが一番会社の利益に貢献していた」という隠れた強みが数字として浮き彫りになってきます。その「数字で裏付けられた強み」こそが、自社が選ばれる理由の原石です。
4. まとめ:「やらないこと」を決める勇気が会社を強くする
「何で選ばれるか」を明確にすることは、裏を返せば「自社がやらないこと(捨てること)」を決めるという経営の大きな決断です。最初は売上が減るのではないかという恐怖があるかもしれません。
しかし、自社の得意分野に経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集中投下することで、サービスの質は向上し、利益率は改善し、結果的に財務体質の強い「選ばれる会社」へと進化していきます。
【実家の相続税が8割減?】知っておきたい「小規模宅地等の特例」の基本と落とし穴


【実家の相続税が8割減?】知っておきたい「小規模宅地等の特例」の基本と落とし穴
「将来、親が亡くなったとき、あの実家の土地にはどれくらいの相続税がかかるのだろう」と、漠然とした不安を抱えている方は少なくありません。土地の価値が高ければ高いほど、税金の負担も大きくなりがちです。
実は、一定の条件を満たすことで、実家の土地の評価額を最大80%も下げられる大変お得な特例があります。それが「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」です。
今回は、知っておくだけで将来の大きな安心につながるこの特例について、名古屋市天白区周辺で実家の相続を考え始めたい方向けに、分かりやすく解説します。
1. 「小規模宅地等の特例」の全体像とよくある勘違い
1-1. 土地の評価額を最大80%減額できる制度
この特例は、残された家族がそれまで住んでいた自宅を売却せざるを得なくなったり、住む場所を失ったりしないように作られた、国による配慮のような制度です。
亡くなった方の自宅の土地(最大330平方メートルまで)について、相続税を計算する際の土地の価値(評価額)を80%減額できる可能性があります。
たとえば、5,000万円と評価される実家の土地にこの特例が適用できると、その価値は1,000万円として計算されます。これによって、相続税が大幅に抑えられたり、そもそも相続税がかからなくなったりするケースがあります。
1-2. よくある勘違い:「税金が8割引きになる」わけではない
ここで多くの方が混同しやすいのが、「かかる税金そのものが80%オフになる」という勘違いです。正しくは以下の通りです。
⭕ 正しい:土地の「評価額」が5,000万円から1,000万円に減るため、その結果として全体の税金が安くなる(またはかからなくなる)
あくまで「土地の評価」を下げる制度であり、税金そのものを直接値引きするものではない点に注意しましょう。
1-3. 先に結論を急がない方がよい理由
「うちは同居しているから絶対に使えるはずだ」「別居しているから端から無理だ」と、最初から自己判断で結論を決めてしまうのは禁物です。この特例は非常に強力な効果がある反面、満たすべき要件が細かく定められています。一見すると対象になりそうなケースでも、書類の不備や手続きの順番を間違えるだけで、適用が認められないという「落とし穴」があるからです。まずは、大まかな要件から一つずつ確認していくことが大切です。
2. 特例を活用できる「主な対象者」と満たすべき要件
小規模宅地等の特例は、亡くなった方の土地を「誰が相続するか」によって、求められる要件が大きく異なります。主な対象者は、次の3つのパターンに分かれます。
2-1. 配偶者が相続する場合
- 主な特徴:もっとも有利に保護されており、無条件で特例の適用を受けることができます。
- 同居の有無:一緒に住んでいなくても、別居していても問題ありません。
- その後の居住:相続した後に、その家をすぐに売却しても特例の適用自体は認められます。
2-2. 同居していた親族が相続する場合
- 居住の要件:相続税の申告期限(亡くなった日の翌日から10か月後)まで、その家に住み続ける必要があります。
- 所有の要件:同じく申告期限まで、その土地を所有し続ける(売却しない)必要があります。
※同居していた実績があっても、相続してすぐに実家を売りに出してしまうと、特例が使えなくなる可能性があるため注意が必要です。
2-3. 別居していた親族が相続する場合(家なき子特例)
亡くなった方に配偶者もおらず、同居していた親族もいない場合に、別居していた子どもなどが相続するケースです。通称「家なき子特例」とも呼ばれますが、これには非常に厳しいハードルがあります。
- 相続開始前3年以内に、日本国内にある「自分・配偶者・三親等内の親族・関係する法人」などが所有する家に住んだことがないこと(親・兄弟姉妹や資産管理会社名義の家に住んでいた場合も対象外になり得ます)
- 相続開始時に、自分が住んでいる家を過去に一度も所有したことがないこと
- 相続税の申告期限まで、その土地を所有し続けること
基本的には「ずっと賃貸アパート暮らしをしている子ども」などが対象となり、すでに自分のマイホームを購入している方は対象外となる可能性が極めて高いと言えます。
📋 状況別の要件まとめ一覧
| 相続する人 | 住まいの条件 | 申告期限(10か月後)までの要件 |
|---|---|---|
| 配偶者 | どこに住んでいても可 | 特になし(売却しても可) |
| 同居の親族 | 亡くなった方と同居 | 住み続けること + 土地を持ち続けること |
| 別居の親族 | 3年以上、持ち家がない | 土地を持ち続けること |
※上記は代表的な要件のイメージです。実際の判定には、さらに細かな事実確認が必要となります。
3. 天白区周辺の実家や土地で確認しておきたいポイント
名古屋市天白区や近隣の昭和区、瑞穂区、名東区といったエリアは、古くからの閑静な住宅街が広がり、敷地がゆったりとした一戸建てが多く見られます。こうした地域の実家で特例を検討する際、特に気をつけておきたい実務的なポイントがいくつかあります。
3-1. 二世帯住宅の登記はどうなっているか
天白区周辺でも増えている「二世帯住宅」ですが、建物の登記方法によって特例が使えるかどうかが分かれます。一棟の建物として登記されていれば特例の対象となる可能性がありますが、内部で完全に区分され、1階と2階でそれぞれ別々に「区分所有登記」されている場合、別居とみなされて特例が一部使えなくなるケースがあります。
3-2. 敷地内に「別の建物」が建っていないか
広い敷地の中に、親の自宅だけでなく、地続きで子ども世帯の家が建っていたり、小さな貸家や店舗が混在していたりすることがあります。土地の境界がはっきりしていない場合、どこまでが「自宅の敷地(特定居住用)」として認められるか、慎重な線引きが必要になります。
3-3. 相続税がかからなくても「申告」が必要
⚠️ もっとも危険な落とし穴
「土地の評価が80%下がれば、基礎控除以下になるから相続税はかからない。だから何もしなくていい」という思い込みは非常に危険です。この特例は、「相続税の申告書を期限内に税務署へ提出すること」で初めて適用が認められます。申告を怠ると、特例を使う前の「高い評価額」で税金が計算され、後から思わぬ納税を求められる恐れがあります。
森本経営会計事務所からのアドバイス
税理士 森本 雄一
実家の土地を相続する際、「ずっと同居していたから大丈夫」と思っていても、住民票を一時的に移していた時期があったり、建物の名義が親族間で複雑に共有されていたりすることで、税務上の判断が大きく変わることがあります。
また、将来的に実家を売却して現金で分け合いたい(換価分割)とお考えの場合、売却するタイミングや遺産分割の決め方によって、相続税だけでなく、その後の「譲渡所得税(所得税・住民税)」の負担にまで影響が及びます。土地の形状、過去の経緯、これからの家族の生活設計など、個別の資料や実際の状況を一つひとつ丁寧に紐解かなければ、最適な選択肢は見えてきません。慌てて売買や名義変更を進める前に、まずは現状の正確な把握から始めてみましょう。
4. まとめ:次に行うことを整理しましょう
実家の土地にかかる税負担を大きく抑えられる可能性を秘めた「小規模宅地等の特例」ですが、その活用には事前の正しい現状把握が不可欠です。最後に、これから皆さんが取り組むべきポイントを3つに整理しました。
分からない部分があっても珍しくありませんし、慌てて決める必要はありません。まずはご家族の間で「将来どうしたいか」という希望を共有することから始めてみてください。
森本経営会計事務所では、天白区周辺の地域に根ざした会計事務所として、こうした実家の相続や不動産の処分に悩む地元の皆様のご相談を承っております。
当事務所は大きな税理士法人ではございません。そのため、最初のお顔合わせから税理士本人が直接お話を伺い、ご家族ごとの個別の事情や迷いに寄り添いながら、親親身で柔軟な対応を心がけております。
手元にすべての資料が完全にそろっていなくても、何が課題で、次にどんな書類を集めればよいか、税務と会計の両面から状況を整理するお手伝いが可能です。相続税의 申告だけでなく、その後の不動産の処分や所得税の影響まで見据えた息の長い支援を大切にしています。
「我が家の場合は特例が使えそうか」「何から手を付ければいいか分からない」という方は、
どうぞ肩の力を抜いて、お気軽に当事務所までお声がけください。
森本経営会計事務所では、名古屋市天白区周辺の地域に根ざした会計事務所として、経営者様ごとのご事情を丁寧に確認し、税務と会計の両面から状況を整理するお手伝いをしております。
将来の引退プランやご家族への資産承継について、少しでも不安や分からない部分がございましたら、どうぞ落ち着いて、まずは一度お気軽にご相談ください。
中古資産の耐用年数はどちらを選ぶ?「新品と同じ年数」で決算書に利益を残し、銀行融資に強い会社をつくる方法
1.節税・財務戦略3.経理)インボイス・日々の経理実務の罠6.事務所だより・経営コラム
1.節税・財務戦略3.経理)インボイス・日々の経理実務の罠6.事務所だより・経営コラム
中古資産の 耐用年数は どちらを選ぶ?「新品と同じ年数」で決算書に利益を残し、銀行融資に強い会社をつくる方法
中小企業が営業車や機械装置などの設備を導入する際、コストを抑えられる中古資産を選ぶケースは少なくありません。そして「中古資産は短い期間で一気に減価償却費(経費)にできるので、節税になり資金繰りが楽になる」という話もよく耳にします。
確かに、利益が出すぎている会社にとっては、早めに経費化して税金を抑えることは手元に資金を残す一つの方法です。しかし、実は「あえて新品と同じ法定耐用年数を使い、長期間かけてじっくり償却する」という選択肢も、法的に認められていることはあまり知られていません。
ここで押さえておきたいのは、税金を減らすことと、本当の意味での資金繰り対策とは、必ずしもイコールではないという点です。目先の節税だけを意識して減価償却費を増やしすぎると、決算書上の利益が圧迫され、銀行からの評価が下がり、必要なときに融資を受けにくくなることもあります。
この記事では、資金繰り対策と銀行融資の関係を整理しながら、中古資産の耐用年数をどう選ぶべきか、黒字経営を支える会計実務の考え方をわかりやすく解説します。
1. 資金繰り対策の本質は「節税」より「銀行融資に強い決算書」
まずお伝えしたいのは、資金繰り対策とは手元の税金を減らすことだけではない、ということです。本当の資金繰り対策とは、会社が自由に使えるキャッシュを確保しつつ、必要なときに資金を調達できる体制を整えておくことだと考えられます。
中小企業が事業を拡大したり、予期せぬ変化を乗り越えたりする際、頼りになる選択肢の一つが銀行からの融資です。そして銀行が融資を判断する際に重視するポイントの一つが、決算書の内容、特に本業でどれだけ利益を出しているかという点です。
銀行は決算書を通じて返済能力があるかどうかを確認します。仮に、手元の税金を抑えたいという理由だけで中古資産を短い年数で一気に経費化し、決算書の利益が大きく圧縮されてしまった場合、金融機関からの評価に影響が出る可能性があります。
税金の負担は軽くなったとしても、その分融資を受けにくくなり、結果として資金繰りがかえって厳しくなるケースも考えられます。たとえば、目先の税金を数十万円抑えられたとしても、それによって数千万円規模の融資が受けにくくなるとすれば、会社全体で見た資金繰りは悪化しかねません。
つまり、あえて新品と同じ長い耐用年数を選び、毎年の減価償却費を抑えて決算書にしっかりと利益を残すという選択は、銀行からの信頼を得て、必要なときに資金を調達しやすくするための一つの財務戦略になり得ます。
2. 中古資産でも「新品と同じ耐用年数」は法的に選択できる
税法上、中古資産を取得した際の耐用年数の計算には、主に二つの方法が用意されています。
📋 中古資産を取得した際の耐用年数計算
- ① 簡便法による耐用年数:税法で定められた簡便な計算式を用いて、残りの使用可能期間を見積もり、短い耐用年数を算定する方法(一般的にはこちらが選ばれやすい)。
- ② 法定耐用年数(新品と同じ):その資産が本来持っている法定耐用年数を、そのまま適用する方法。
「中古資産なのに新品と同じ年数で計算して問題にならないか」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、法人税法施行令第57条では、中古資産についても法定耐用年数を適用することが認められています。
どちらの方法を選ぶかは、経営者が自社の財務状況や今後の見通しに合わせて判断できる事項です。ただし、資産の取得時期や事業供用の状況などによって適用できる条件が異なる場合もあるため、実際に適用する際は、自社のケースに当てはめて確認することが大切です。
3. 具体例で見る、耐用年数の違いによる「経費」と「残る利益」の差
耐用年数の選び方によって決算書の数字がどう変わるか、国税庁の減価償却資産の償却率表をもとに、一つの例で確認してみましょう。
🚘 【算出の前提条件】
・資産の種類:普通乗用車(法定耐用年数 6年)
・中古での経過年数:3年
・取得価額:300万円(定率法を採用、期首に取得)
| 比較項目 | パターンA:簡便法(短い年数) | パターンB:新品の法定耐用年数 |
|---|---|---|
| 適用する耐用年数 | 2年(最短) | 6年 |
| 定率法の償却率 | 1.000 | 0.333 |
| 1年目の減価償却費(経費) | 300万円 | 99万9,000円 |
| 2年目以降に繰り越す経費 | ほぼ0円 | 約200万円 |
この二つを比較すると、1年目の経費に約200万円の差が生まれます。今期の業績によってはパターンAを選ぶと赤字になってしまう局面でも、パターンBを選ぶことで決算書上の利益を200万円ほど多く残せる可能性があります。こうした利益の差は、銀行融資の審査結果にも影響しうる要素の一つと考えられます。
4. 実務上の注意点:一度選んだ方法は原則として変更できない
この考え方を実務で活用する際に、必ず押さえておきたい注意点があります。それは、一度新品と同じ耐用年数で償却を始めると、後から「やはり短い期間に変更したい」といった変更は、正当な理由がない限り原則として認められないという点です。
確定申告書を提出する段階でどちらの耐用年数を採用するかを決め、その計算で申告を行うと、その資産についてはそれ以降も同じ耐用年数で償却を続けることになります。これは「継続性の原則」と呼ばれる考え方に基づくものです。
⚠️ 安易な変更は不可能です
「今期さえ乗り切れればよい」という短期的な判断だけで決めるのは避けたいところです。来期以降の売上見通しや固定費、人件費の推移、将来の設備投資計画まで見据えたうえで、慎重に選択することが重要です。
5. まとめ:節税と利益管理は「月次決算」と「経営計画」で先手を打つ
中古資産の耐用年数をどう選ぶかは、単なる経理処理の問題ではありません。会社の利益、現預金、自己資本をどうコントロールし、銀行融資に強い会社をつくっていくかという経営判断そのものといえます。
利益が出すぎているときは短い年数で節税を選び、融資を受けたいときは長い年数で利益を残す。こうした判断を的確に行うためには、決算直前になって慌てて検討するのでは間に合わないケースも少なくありません。
📌 強い財務体制をつくるための2つの土台
自社の数字に関心を持ち、継続的に確認できる経営管理の体制を整えることが、資金繰りを安定させ、黒字経営を実現していくための土台になります。
森本経営会計事務所からのご案内
税理士 森本 雄一
減価償却の方法を検討し、銀行融資に評価される決算書をつくることは、会社に資金を残し、次の成長につなげるために欠かせないプロセスです。ただし、自社にとって中古資産としての耐用年数と新品と同じ耐用年数のどちらが有利かは、将来の業績見通しも含めて総合的に判断する必要があり、経営者様おひとりで決めるのは簡単ではありません。
森本経営会計事務所では、愛知県名古屋市天白区を中心に、多くの中小企業様の月次決算の体制づくりや経営計画の策定をサポートしています。税務申告書の作成にとどまらず、クラウド会計なども活用しながら、経営者様が自社の数字を見て次の一手を判断できる環境づくりをご一緒に進めています。その場しのぎの節税ではなく、銀行融資に評価される健全な黒字経営を目指したい、自社の数字をもっと見える化して資金繰りの不安を減らしたいとお考えの経営者様は、一度当事務所までご相談ください。
📖 参考資料
法人税法第31条、法人税法施行令第48条の2、法人税法施行令第57条(中古資産の耐用年数)、国税庁タックスアンサーNo.5404「中古資産を購入した場合の耐用年数」、国税庁「減価償却資産の償却率表(定率法)」
※本記事の内容は2026年7月時点の税制に基づいています。減価償却方法および耐用年数は、正当な理由がない限り事業年度の途中で任意に変更することはできません。個々の資産の取得時期や適用条件によって取り扱いが異なる場合がありますので、実際の適用に際しては最新の法令・国税庁の公式情報をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。
銀行融資に評価される健全な黒字経営を目指したい、資金繰りの不安を減らしたいとお考えの経営者様は、一度当事務所までご相談ください。
自社が調査対象になりやすい特徴に当てはまっていないか不安な方、
事前に対策を講じたい経営者様は、当事務所へお気軽にご相談ください。
社長が退職金を2回受け取る?|非常勤への分掌変更と死亡退職金を組み合わせる資産承継の注意点


社長が退職金を2回受け取る?非常勤への分掌変更と死亡退職金を組み合わせる資産承継の注意点
長年、会社を支えてこられたオーナー企業の経営者様にとって、ご自身の引退と将来の資産承継は非常に重要な関心事ではないでしょうか。
会社に蓄積された利益を、どのようにして次世代やご家族へ引き継ぐべきか、多くの方が悩まれています。
今回の記事では、社長が常勤から非常勤へ移行するタイミングと、その後にもしも万が一のことがあった場合の2段階で、会社の資金をご家族へ還流させる仕組みについて分かりやすく解説します。
完全に会社を退くのではなく、非常勤として会社を支え続けながら、ご家族に無理のない形で資産を遺す選択肢があることを、まずは知っていただければ幸いです。
名古屋市天白区やその周辺地域で、これからの会社経営とご家族への資産承継のバランスについて考えておられる経営者様にとって、将来の進路を整理する一つのきっかけになれば嬉しく思います。
1.非常勤役員への変更と退職金を組み合わせるメリット
1-1.常勤から非常勤への移行時に支払う退職金
多くの経営者様は、社長の座を退くときが退職金を支給する唯一の機会だと考えていらっしゃいます。しかし、完全に会社を辞めなくても、退職金を支給できる法的な仕組みが存在します。それが、常勤の取締役から非常勤の役員への移行などに伴う、「分掌変更による退職金」です。
分掌変更とは、社内での役割や職務内容が大きく変わることを指します。社長としての激務を後進に譲り、ご自身は一歩引いた立場で会社を支える非常勤役員になる場合、実質的に退職したとみなされるケースがあります。このタイミングで1回目の退職金を支給することにより、法人の利益を適切に減らしつつ、個人の手元資金を厚くすることが可能になります。
1-2.分掌変更による退職給与の注意点とよくある勘違い
ここで多くの方が勘違いしやすいのは、肩書さえ非常勤に変えれば、いつでもいくらでも退職金を支払えるという点です。税務上、実質的な退職と認められるためには、形式的な変更だけでは足りません。具体的には、以下のような実態が伴っている必要があります。
📋 実質的な退職と認められるための主な実態
- 役員としての報酬が大幅に減少(概ね50%以上)していること
- 経営の第一線から退き、代表権やこれまでの重要な決定権を後継者に譲っていること
- 常時出勤するのをやめ、必要に応じた相談対応などに留まっていること
⚠️ これらが満たされていないと、税務調査の際に退職金として認められず、法人の経費(損金)から否認されるリスクが生じます。
2.非常勤役員のもしもに備える死亡退職金の手続きと税金
2-1.死亡退職金に認められている相続税の非課税枠
非常勤役員として会社を支え続けているなかで、もしも万が一のことが起きた場合、会社からご遺族に対して死亡退職金を支給することができます。非常勤であっても、会社への貢献度や過去の経歴を踏まえて適正に算出されたものであれば、支給自体は認められる傾向にあります。そして、この死亡退職金には、相続税の計算において非常に強力な税制上の優遇措置が用意されています。
💡 死亡退職金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
2-2.現金で遺す場合と死亡退職金で受け取る場合の税負担の差
この非課税枠がどれほど大きなインパクトを持つのか、具体的な数字で確認してみましょう。例えば、法定相続人が配偶者とお子様2人の合計3人であるケースを想定します。この場合の非課税枠の計算は、500万円 × 3人 = 1,500万円となります。
| 遺し方の違い(1,500万円の場合) | 相続税への影響 |
|---|---|
| ① 個人名義の預金として遺す | 1,500万円の全額がそのまま相続税の課税対象に含まれる。 |
| ② 法人から死亡退職金として支給 | 非課税枠(1,500万円)の内側となるため、相続税の負担を大幅に抑えられる。 |
現金を個人の口座で眠らせておくよりも、法人を通じてご家族に届ける方が、結果として税負担を軽減できる可能性が高くなるのです。
※重要:死亡退職金の非課税枠の適用には、遺産分割の状況や受取人の要件など細かな規定があるため事前の確認が必要です。
2-3.法人が契約者となる生命保険を活用した原資の準備
非常勤役員の退職金や将来の死亡退職金を支払うためには、会社にそれだけの原資(現金)が用意されていなければなりません。いくら制度上メリットがあっても、会社の資金繰りを悪化させてしまっては本末転倒です。そこで、多くのオーナー企業で活用されているのが、法人が契約者となる生命保険です。毎月の保険料を支払う際は法人の経費としながら、将来に向けて着実に資金を積み立て、万が一の際には保険金をそのままご遺族への死亡退職金に充てることができます。これにより、会社のキャッシュフローを急激に圧迫することなく準備を進めることができます。
3.名古屋市天白区や周辺地域で確認したいこと
3-1.法人の出口戦略と個人の資産承継のバランス
今回のテーマは、法人の税務対策だけでなく、経営者様個人の相続対策や資産承継という2つの側面が完全に重なり合う部分です。天白区周辺地域でも、古くから地域に密着して事業を営まれているオーナー企業様が多くいらっしゃいます。自社株の評価や個人所有の不動産、会社の現預金をどのように引き継ぐか、まずは現状を一つずつ整理していくことから始める必要があります。
📌 事前に整理しておきたい自社の状況
3-2.適正な金額設定と税務リスクへの備え
非常勤役員への退職金や死亡退職金は、非常に大きなメリットがある反面、税務署からのチェックも厳しくなりやすい項目です。節税になるからという理由だけで、非常勤の実態に見合わないような高額な退職金を支給してしまうと、税務調査の段階で不相当に高額な部分として否認され、経費として認められない恐れがあります。
役員退職金の適正額を算出するにあたっては、一般的に「功績倍率」と呼ばれる基準などが用いられます。これまでの常勤時代の在職年数や最終報酬月額、あるいは非常勤になってからの貢献度などを総合的に考慮し、客観的な根拠を持った計算書類や議事録を作成しておくことが不可欠です。
※注意:事前の規程整備や議事録の未作成は、税務調査時に否認される大きな要因となるため、早期の対応が必要です。
森本経営会計事務所からのアドバイス
森本経営会計事務所 税理士 森本 雄一
非常勤役員の退職金は、実質的な職務内容の変更や支給額の客観的な根拠が非常に厳しく問われる論点です。税務上のリスクを避けるためにも、役員規程の整備や議事録の残し方、支給額の計算プロセスは慎重に進めなければなりません。これらの判断や事前のシミュレーションには、法人の過去の決算書や個人の資産状況など、総合的な資料の確認が必要となります。個別の事情によって取扱いが大きく異なるため、慌てて支給を決める前に、まずは現在の状況を一緒に整理してみることをおすすめいたします。
4.まとめ:次に行うことを整理しましょう
最後に、非常勤役員の退職金と死亡退職金の活用において、大切になるポイントを振り返ります。
- 分掌変更の実態を整え、肩書だけでなく報酬や職務内容を実際に変更する。
- 死亡退職金の非課税枠を正しく理解し、個人の現預金で遺す場合と比較する。
- 客観的な根拠を遺すために、適正な金額計算や規程の整備を事前に行っておく。
これからの具体的な第一歩としては、まず会社の役員退職慰労金規程が手元にあるか、最後に改定されたのはいつかを確認することから始めてみてください。もし資料が完全にそろっていなくても、今どのような決算状況であるかを確認するだけで、将来の選択肢を絞り込んでいくことができます。
役員の退職金問題は、単に法人税を減らすためだけの手続きではありません。経営者様が命がけで守ってきた会社から、長年支えてくれたご家族へ、税金負担を抑えた形で確実な財産を遺すための「最後のバトンパス」です。
ご家族の構成や会社の資金状況、さらには将来の不動産の相続登記や所得税の申告まで見据えると、最適な選択肢は一人ひとり全く異なります。
森本経営会計事務所では、名古屋市天白区周辺の地域に根ざした会計事務所として、経営者様ごとのご事情を丁寧に確認し、税務と会計の両面から状況を整理するお手伝いをしております。
将来の引退プランやご家族への資産承継について、少しでも不安や分からない部分がございましたら、どうぞ落ち着いて、まずは一度お気軽にご相談ください。
大学生のアルバイト収入はいくらまで?扶養控除と特定親族特別控除をわかりやすく解説|森本経営会計事務所
「子どもがアルバイトを頑張っているけど、稼ぎすぎると親の税金が増えてしまうの?」
令和7年度の税制改正で、19歳以上23歳未満のお子さんに関する仕組みが大きく変わりました。
この記事では、大学生の方にも読みやすいよう、ポイントをわかりやすくまとめています。
1. 19歳以上23歳未満の親族って、どんな人が対象?
税法上の「19歳以上23歳未満の親族」とは、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の方をさします。大学生・短大生・専門学校生のお子さんが多く該当します。
この年齢層は「特定扶養親族」と呼ばれ、一般の扶養親族(16歳以上)よりも控除額が大きく設定されています。令和7年度の改正では、これに加えて「特定親族特別控除」という新しい制度が創設されました。
年齢の判定は「12月31日時点」で行います。その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満であれば対象です。なお、アルバイト収入だけでなく、すべての所得(給与・雑所得など)を合算した「合計所得金額」で判定します。
2. 親が受けられる控除は、収入額によって3段階に変わる
改正後の所得税(令和7年分以後)では、大学生のお子さんの収入に応じて、親が受けられる控除が3段階に分かれます。
→ 特定扶養親族:扶養控除 63万円
→ 特定親族特別控除:63万円〜3万円(段階的に減少)
→ 控除なし:0円
改正前との大きな違い
改正前は給与収入103万円(合計所得48万円)を超えると扶養控除が0円になっていました。改正後は、収入が増えても188万円以下であれば段階的に控除が受けられるため、「一気にゼロ」という状況が緩和されています。
3. 特定親族特別控除の金額一覧(国税庁より)
給与収入が123万円を超えた場合でも、188万円以下であれば以下の控除を受けられます。収入が増えるほど控除額は減っていきます(段階的逓減方式)。
| お子さんの合計所得金額 | 給与収入のみの場合の目安 | 親が受けられる控除額 |
|---|---|---|
| 58万円以下 | 〜123万円 | 63万円 (扶養控除として) |
| 58万円超 85万円以下 | 123万円超〜150万円 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下 | 150万円超〜155万円 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 155万円超〜160万円 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 160万円超〜165万円 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 165万円超〜170万円 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 170万円超〜175万円 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 175万円超〜180万円 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 180万円超〜185万円 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 185万円超〜188万円 | 3万円 |
| 123万円超 | 188万円超 | 0円(控除なし) |
※給与収入の目安は概算です。給与以外の所得がある場合は異なります。
出典:国税庁 No.1177 特定親族特別控除
複数のアルバイト先がある場合は、すべての給与収入を合計して判定します。「1社だけなら少ない」と思っていても、合算すると基準を超えることがあります。短期・単発バイトも含めて確認しましょう。
4. 税金とは別!社会保険の扶養は150万円未満が新基準
税金(所得税・住民税)の扶養とは別に、健康保険の扶養認定にも注意が必要です。
130万円未満 (年間収入の基準)
150万円未満 (令和7年10月1日以降/配偶者を除く)
令和7年10月1日より、19歳以上23歳未満の方については、社会保険の扶養認定の収入基準が150万円未満に引き上げられました。ただし、これは税金の扶養控除・特定親族特別控除とは別の話です。
税金と社会保険は別々に確認が必要
税金の扶養(所得税法・国税庁が管轄)と社会保険の扶養(健康保険組合・年金事務所が管轄)では、判定の基準額・手続き先・考え方がそれぞれ異なります。どちらも別々に確認することが大切です。
また、アルバイトの勤務時間や契約内容によっては、お子さん自身が職場の社会保険に加入する場合があります。その場合は親の扶養から外れますので、アルバイト先にも確認しておきましょう。
5. 年末調整・確定申告の前に確認したいこと
親御さんの年末調整や確定申告で控除を正しく受けるためには、お子さんの年間収入の確認が欠かせません。
- 源源徴収票の「支払金額」欄が、その年の給与収入にあたります。
- 年の途中であれば、給与明細や勤務先からの収入見込みで確認しましょう。
- 複数のアルバイトをしている場合は、全勤務先の収入を合算して判定します。
- 年末に向けてシフトを増やす場合は、年間合計が想定より増えることがあります。
令和8年分の年末調整からは「給与所得者の特定親族特別控除申告書」が新設されています。会社に提出する書類が増えますので、記入漏れのないよう早めに確認しておきましょう。
6. まとめ:収入額ごとの整理
| お子さんの給与収入 | 所得税の取扱い | 社会保険の扶養(目安) |
|---|---|---|
| 123万円以下 | 特定扶養親族として扶養控除(63万円) | 扶養内 |
| 123万円超〜150万円未満 | 特定親族特別控除(63万円〜一部) | 扶養内 (19〜23歳未満の場合) |
| 150万円〜188万円以下 | 特定親族特別控除(一部) | 扶養から外れる場合あり |
| 188万円超 | 控除なし | 扶養から外れる場合あり |
※社会保険の欄は一般的な目安です。健康保険組合により基準が異なる場合があります。
森本経営会計事務所では、扶養控除・特定親族特別控除・年末調整・確定申告に関するご相談をお受けしています。お子さんのアルバイト収入が増えてきた場合は、年末調整・確定申告の前に、年間収入の見込みを早めに確認しておきましょう。ご不明な点はお気軽にご相談ください。
このブログは2026年6月に作成されたものです。令和7年分以後の所得税に適用される内容をもとにしています。
税制は改正されることがあります。最新の情報は国税庁ウェブサイト(www.nta.go.jp)または当事務所までご確認ください。
配偶者の扶養はいくらまで?「税金の壁」と「社会保険の壁」の違いを税理士がわかりやすく解説
配偶者の扶養はいくらまで?税金の壁と社会保険の壁をわかりやすく解説
税理士 森本 雄一
配偶者がパートやアルバイトで働いているご家庭では、「いくらまでなら扶養に入れるのか」「収入が増えると税金や社会保険はどう変わるのか」というご相談をよくいただきます。
「扶養」と一言でいっても、税金の扶養と社会保険の扶養は別々の制度です。金額の基準が異なるため、まずはこの2つを切り分けて理解することが大切です。
1. 「収入」と「所得」の違いをおさえておましょう
扶養の話をする前に、確認しておきたいことがあります。それは「収入」と「所得」の違いです。
💰 給与収入(額面)
会社から受け取る総支給額、つまり源泉徴収票の「支払金額」にあたります。
📉 給与所得
給与収入から「給与所得控除(会社員の経費のようなもの)」を差し引いた後の金額です。
扶養の判定では主に「収入」の金額を使いますが、制度によって見方が異なる場合もあります。収入と所得を混同しないよう注意が必要です。
2. 税金の扶養は配偶者控除と配偶者特別控除で考えます
所得税の計算では、配偶者の年収に応じて「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けられる場合があります。控除が大きいほど、世帯の税負担は軽くなります。
給与収入だけの場合、所得税の控除基準は次のように整理できます。
| 配偶者の給与収入 | 適用される控除 |
|---|---|
| 136万円以下 | 配偶者控除の対象(満額の控除) |
| 136万円超 〜 207万円以下 | 配偶者特別控除(段階的に控除額が減少) |
| 207万円超 | 控除対象外(どちらも受けられません) |
ここで大切なのは、136万円を少し超えたからといって、すぐに控除がゼロになるわけではないということです。207万円まで控除が段階的に残る仕組みになっているため、「少しだけ超えたら大損」とは限りません。
※なお、控除を受ける側(配偶者を扶養している方)の年収が1,000万円を超える場合は、配偶者控除・配偶者特別控除ともに適用されません。
3. 社会保険の扶養は原則130万円未満です
税金とは別に、健康保険や年金にも扶養の仕組みがあります。社会保険の扶養では、原則として年間収入130万円未満(月収換算で108,333円以下)が一つの基準です。(※60歳以上または一定の障害のある方の場合は年間収入180万円未満)
⚠️ 税金と社会保険の「扶養のズレ」に注意
たとえば年収132万円の場合、税金上は配偶者控除の対象になりますが、社会保険の扶養からは外れる可能性が高くなります。また、社会保険は1月〜12月の実績ではなく、「これから先1年間の収入見込み」で判断される点も大きな違いです。
さらに、年収が130万円未満であっても、配偶者ご本人の勤務時間や勤務先の規模などによっては、職場の社会保険に自ら加入しなければならないケースがあります(いわゆる106万円の壁)。その場合も扶養から外れることになります。
4. 手取り額全体で考えることが大切です
「年収の壁を超えると損をする」とよく言われますが、税金だけを見て判断するのは十分ではありません。社会保険の扶養から外れると、健康保険料や年金保険料の自己負担が新たに発生するため、手取り額への影響が大きくなる場合があります。
手取りが一時的に減る一方で、将来受け取れる「厚生年金」が増える、病気休業時の傷病手当金が手厚くなるなどの大きなメリットもあります。
「税金がいくら増えるか」だけでなく、社会保険料の負担、将来の年金、希望する働き方なども含めて、世帯全体で総合的に判断することが重要です。
5. まとめ
- 配偶者の扶養を考えるときは、「税金」と「社会保険」を分けて整理する。
- 税金の目安:給与収入だけの場合、配偶者控除は136万円以下、配偶者特別控除は136万円超〜207万円以下。
- 社会保険の目安:原則130万円未満だが、勤務先の規模等によっては106万円で外れることもある。
- 年末調整や確定申告の時期になって慌てないよう、年の途中から収入の見込みを確認しておきましょう。
※本記事は2026年6月時点の法令、制度に基づき作成しています。税制や社会保険制度は随時改正されることがあるため、実際の判断にあたっては最新情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを提供するものではありません。
中小企業の車両リース契約|経費処理できる?会計・税務の判断基準と仕訳の方法
中小企業の車両リース契約 ― 用語解説・会計・税務の判断基準・仕訳の方法
中小企業が社用車をリースする際、「リース資産として帳簿に計上すべきか、それとも単純にリース料を費用として処理してよいのか」は、契約内容によって結論が変わります。本記事では、判断に必要な専門用語をひとつずつ解説しながら、会計上・税務上の取扱い、視覚的に分かりやすい実際の仕訳の方法まで、順を追って整理します。
1. リース取引とは何か
リース取引とは、リース会社(レッサー)が車や機械などの物件を購入し、それを利用者(レッシー、借り手)に貸し出して、利用者が毎月(または毎年)「リース料」を支払う契約のことです。普通の賃貸借(アパートを借りるイメージ)と違うのは、契約期間や支払い方法によっては「実質的に物を買ったのと同じ」とみなされる場合がある、という点です。
2. リース取引の分類:ファイナンス・リースとオペレーティング・リース
リース取引は、経済的な実態によって大きく「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分けられます。この分類が、会計上どう処理するかを決める出発点になります。
2-1. ノンキャンセラブル(解約不能)とは
契約期間中に、借り手が一方的に契約を解約できないという条件のことです。たとえば「5年契約で、途中で車を返したくても違約金なしでは解約できない」という場合がノンキャンセラブルです。逆に「1ヶ月前に連絡すればいつでも解約できる」契約はキャンセラブル(解約可能)です。
2-2. フルペイアウト(物件代金の全額回収)とは
リース料の合計額が、リース会社がその物件を買うのにかかった代金を、ほぼ全額回収できるように設定されているという条件です。実務上の目安としては、次の2つの数値基準のいずれかを満たすかどうかで判断します。
- 90%基準:リース料総額を現在価値(将来もらえるお金を、今の価値に置き換えた金額)に直したものが、物件の見積購入価額の概ね90%以上になるか。
- 75%基準:リース期間が、その物件を経済的に使える期間(経済的使用可能予測期間)の概ね75%以上になるか。
💡 例:300万円の車を5年間リースし、リース料の総額(現在価値換算)が285万円(95%)になる契約は、フルペイアウトに該当します。逆に、2年だけのリースで総額が120万円(40%)しかない契約は、フルペイアウトには該当しません。
※「ノンキャンセラブル」かつ「フルペイアウト」の両方を満たす契約が「ファイナンス・リース」、どちらか一方でも満たさない契約が「オペレーティング・リース」と判定されます。
2-3. 所有権移転/所有権移転外ファイナンスリースの違い
ファイナンス・リースに該当した場合、さらに「契約終了後に物件の所有権が借り手に移るかどうか」で2つに分かれます。
| 区分 | 特徴と取扱い |
|---|---|
| 所有権移転 | 契約終了後に自動的に所有権が借り手に移る、または格安で購入できる権利がある場合。実質は「分割購入」と同じなため、必ずリース資産として計上し、減価償却します。 |
| 所有権移転外 | 条件は満たすものの、終了後も所有権はリース会社に残る場合。経済的には購入と同じ効果ですが、法的な所有権は移りません。 |
2-4. オペレーティング・リースとは
条件を満たさない、単純な「物のレンタル」に近いリースです。アパートを借りるのと同じ感覚で、毎月の支払いをそのまま費用(賃借料など)として処理すればよく、資産として帳簿に計上する必要はありません。
3. 会計上の取扱い
3-1. 原則的な取扱い:ファイナンス・リースは、原則としてリース資産・リース債務として帳簿に計上(オンバランス)します。オペレーティング・リースは、賃貸借処理(支払時に費用化)で構いません。
🌟 3-2. 中小企業の会計に関する基本要領による簡便な取扱い
「中小企業の会計に関する基本要領」を採用している会社であれば、所有権移転外ファイナンスリースに該当する場合でも、金額的な重要性が乏しいときは、通常の賃貸借取引と同様の処理(支払時に費用化)をすることが認められています。多くの中小企業はこの簡便な扱いを利用しています。ただし所有権移転ファイナンスリース(実質購入)については、必ず資産計上が必要です。
4. 税務上の取扱い
4-1. 原則(リース取引は売買とみなす):法人税法上は、ファイナンス・リース取引を「売買」とみなします。つまり会計上の処理とは関係なく、税務上はリース資産・リース債務として計上し、減価償却していく処理が原則として求められます。
4-2. 少額リース資産の特例:ただし、リース期間が1年以内、または契約金額の合計が300万円以下である場合は、税務上も賃貸借処理(支払時に費用化)が認められる特例があります。
5. 残価設定リース(車のリース)特有の論点
車のリースでよく見られる「残価設定」とは、契約終了時に予想される車の残存価値をあらかじめ見積もり、その分をリース料の計算から差し引く方式です。これにより毎月の支払いが安くなります。
残価設定があると、リース料総額が車の代金の大半をカバーしない(フルペイアウトにならない)ケースが出てくるため、オペレーティング・リースに区分されやすくなる一因になります。ただし、契約終了時の買取価格が市場価格より明らかに割安であれば、所有権移転ファイナンスリースとみなされる可能性が高くなるので注意が必要です。
6. 具体的な仕訳の方法
📝 例:300万円の車を5年間、年60万円(合計300万円)でリースする場合
6-1. 賃貸借処理の仕訳(オペレーティング・リース、または中小企業の簡便処理)
※契約開始時には仕訳をしません。リース料を支払うたびに費用処理します。
(借方)賃借料(リース料) 600,000円 / (貸方)現金預金 600,000円
6-2. オンバランス処理・利子抜き法(原則的な方法)
(借方)リース資産 3,000,000円 / (貸方)リース債務 3,000,000円
【リース料支払時(元本と利息に分解)】
(借方)リース債務 540,000円 / (貸方)現金預金 600,000円
(借方)支払利息 60,000円 /
【決算時(減価償却)】
(借方)減価償却費 600,000円 / (貸方)リース資産(または累計額) 600,000円
6-3. オンバランス処理・利子込み法(簡便法)
中小企業でよく使われる、利息を分けない簡便な方法です。
(借方)リース資産 3,000,000円 / (貸方)リース債務 3,000,000円
【リース料支払時】
(借方)リース債務 600,000円 / (貸方)現金預金 600,000円
【決算時(減価償却)】
(借方)減価償却費 600,000円 / (貸方)リース資産 600,000円
7. まとめ:契約内容ごとの判断フロー
8. 具体例:6年償却の車を3年リースし、残価設定する場合の判定
300万円の車を、経済的使用可能期間6年と考え、リース期間を3年、3年後の残価を1,500,000円(購入価額の50%)に設定したとします。
・90%基準:リース会社が回収する額は300万−150万=約150万円(50%程度のため90%未満)
このように、妥当な残価設定を行うと数値基準をクリアしないため、車のリースはオペレーティング・リース(計上不要・賃貸借処理でよい)と判断されるケースが多くなります。これが実務上の理由です。
ただし、実際の数字や買取条件(格安で買い取れる権利など)によってはファイナンス・リースとみなされることもあるため、契約書の確認が不可欠です。
※本記事の内容は一般的な解説です。個別の契約における最終的な判断やご不明な点については、当事務所までお気軽にご相談ください。
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